ペリボイア
エリボイア · ペリボイアー · Periboea
ギリシア神話で「牛に囲まれた」を意味する名。オーケアニス、テラモーンの妻で大アイアースの母、オイディプースの育ての母など、同名の人物が十人ほど知られる。
解説
概要
ペリボイア(Περίβοια、「牛に囲まれた」)は、ギリシア神話に現れる複数の女性の名である。ペリ(「まわりに」)とボエス(「牛」)に由来する。
同名の人物が十人ほど知られており、系譜も物語も互いに異なる。
同名の女性たち
オーケアニスの一人。 オーケアノスとテーテュースの三千の娘のうちの一人。レーラントスとのあいだにアウラーを産んだ。
巨人エウリュメドーンの娘。 ポセイドーンとのあいだにナウシトオスを産んだ。
サラミースの王キュクレウス、あるいはメガラの王アルカトオスの娘。 テラモーンに犯され、テラモーンは逃げ去った。これを知った父は彼女を海へ投げ込むよう命じたが、実行を任された番人が憐れんで売り払う。買い取ったのが、ほかならぬテラモーンであった。彼とのあいだに大アイアースを産む。ミーノータウロスへの贄となる者たちのうちにも数えられ、船上でミーノースに迫られたところをテーセウスに守られ、のちにこれと結ばれたという。エリボイアとも呼ばれる。
コリントス王ポリュボスの妻メロペーの別名。 オイディプースの育ての母にあたる。
ナーイアスの一人。 イーカリオスの妻で、ペーネロペーらの母。イーカリオスの妻はアステロディア、ドーロドケー、ポリュカステーとも伝えられる。
ヒッポノオスの娘。 オレノスの人で、オイネウスとのあいだにテューデウスを産んだ。ヒッポストラトスに誘惑されたため、父からオイネウスのもとへ送られたという。
ロクリスの乙女。 小アイアースの冒瀆への償いとして、トロイアのアテーナー神殿へ送られた最初の二人の乙女の一人。もう一人はクレオパトラーである。
このほか、アケッサメノスの長女(河神アクシオスとのあいだにペラゴーンを産む)、メゲースとのあいだにトロイア人ケルトスとエウビオスを産んだ者、風の主アイオロスの娘などが知られる。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
名が「牛に囲まれた」を意味することは、ギリシアにおける富の観念を示す。牛の数が財産の指標であり、女性の名にもそれが用いられた。同じ発想は「牛の目の」を意味するヘーラーの添え名ボーピスにも見られる。
関わる神格・伝承
当DBでは、telamon・ajax がテラモーンの妻を、oedipus がオイディプースの育ての母を、penelope がイーカリオスの妻を、tydeus・oeneus がヒッポノオスの娘を指して言及している。名だけでは区別できないため、この項目で整理しておく必要がある。
エリボイアという異形も用いられ、テラモーンの妻については両形が併存する。
文化的足跡
日本語圏でこの名が挙げられることはまずない。大アイアースの母、あるいはオイディプースの育ての母として言及される程度である。
同じ名が十人ほどに与えられているという事態は、ギリシア神話が単一の作者による体系ではなく、地域ごとの伝承の集積であることを示している。名の重複は混乱ではなく、伝承が別々に育った痕跡である。