レーラントス
レーラントス · レーラントゥス · Lelantos
ノンノス『ディオニュソス譚』にのみ現れるティーターンで、ニュンペーのアウラの父。名は「見えない者」を意味するとされ、娘の名「そよ風」と対応する。古代末期における神話創作の例である。
解説
概要
レーラントス(Lelantos、レーラントゥス)は、後期の叙事詩——5世紀初頭に書かれたパノポリスのノンノス『ディオニュソス譚』——に現れる小さな神話上の人物である。
ディオニュソス譚
レーラントスは、ニュンペーのアウラ(「そよ風」)の父であるティーターンである。アウラはアルテミスの狩りの伴侶であり、ディオニューソスによってイアッコス——エレウシースの秘儀に関わる小さな神格——の母となった。
レーラントスはオーケアニスのペリボイアを妻とした。
名
名はギリシア語のレーテー(忘却)あるいはランタノー(「気づかれずにある」)と関連するとされ、「見えない者」「気づかれぬ者」を意味する可能性がある。空気の見えなさが、その名に反映されているという解釈である。
娘アウラが「そよ風」を意味することと、この語源は対応する。
位置づけ
ノンノス以外の資料に、この神の名は現れない。ノンノス自身の創作である可能性が高い。
『ディオニュソス譚』は全48巻、約2万1千行に及ぶギリシア語最長の現存する叙事詩であり、ディオニューソスの生涯を主題とする。ノンノスは既存の神話を膨大に取り込みながら、多くの新しい人物を作り出した。レーラントスもその一人とみられる。
古代末期における神話の創作という現象を示す例である。異教の神話が体系として完結したのちも、詩人は新しい神を作り続けた。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
一つの詩にのみ現れる神という点が、この存在を規定する。神話の伝承ではなく、個人の詩作の産物である。
関わる神格・伝承
妻はペリボイア、娘はアウラ。孫はイアッコス。ティーターンの一柱とされる。
エウボイア島のレーラントス平野——前8世紀のレーラントス戦争の舞台——と名が同じであるが、関係は明らかでない。
文化的足跡
日本語圏でこの名が挙げられることはまずない。ノンノスの叙事詩の研究において言及される。