クレオパトラー
クレオパトラ · アルキュオネー · Cleopatra
ギリシア神話で「父の栄光」を意味する名。ボレアースの娘(ピーネウスの先妻)、メレアグロスの妻、ダナイデスの一人など、同名の女性が六人ほど知られる。
解説
概要
クレオパトラー(Κλεοπάτρα、「父の栄光」)は、ギリシア神話に現れる複数の女性の名である。同名の人物が六人ほど知られており、系譜も物語も互いに異なる。
なお、プトレマイオス朝エジプトの女王クレオパトラ7世は歴史上の人物であり、本項の扱う範囲ではない。
同名の女性たち
ボレアースの娘。 北風の神とアテーナイの王女オーレイテュイアの娘で、ボレアダイとキオネーの姉妹にあたる。トラーキア王ピーネウスの先妻となり、二人の息子を産んだ。名はプレークシッポスとパンディーオーンとも、ゲリュンバスとアスポンドスとも、ポリュデクトールとポリュドーロスとも、パルテニオスとクランビスとも伝えられる。この縁により、ボレアダイはピーネウスの甥にあたることになる。ハルピュイアに苦しめられるピーネウスをアルゴナウタイの二人が救う場面に、この血縁が筋を与えている。
メレアグロスの妻。 アルキュオネーとも呼ばれる。イーダースの娘である。夫がカリュドーンの猪狩りののち伯父を殺し、母アルタイアーの呪いを受けて館に籠もったとき、彼を説いて出陣させた。夫の死ののち、姑とともに自ら命を絶ったと伝えられる。
ダナイデスの一人。 ダナオスの五十人の娘のうちの一人。
トロイア王トロースの娘。 河神スカマンドロスの娘カリロエーとのあいだの娘で、イーロス、アッサラコス、ガニュメーデースの姉妹にあたる。
クレータ王デウカリオーンの妻。 イードメネウスの母。
ロクリスの乙女。 小アイアースの冒瀆への償いとして、トロイアのアテーナー神殿へ送られた二人の乙女の一人。ペリボイアとともに最初の籤に当たり、その死後も千年にわたって毎年二人が送られたと伝えられる。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
名の意味は「父の栄光」である。クレオス(κλέος、名声)とパトール(πατήρ、父)の合成であり、ギリシアにおいてありふれた女性名であった。神話上の複数の人物が同じ名を負うのは、実際にこの名が広く用いられていたことの反映である。
関わる神格・伝承
ボレアースの娘としては、ボレアダイとキオネーの姉妹。メレアグロスの妻としては、イーダースの娘であり、カリュドーンの猪狩りの物語群に属する。
当DBでは、boreas・boreads・oreithyia・phineus の四記事が前者を、meleager・althaea・idas・calydonian-boar の四記事が後者を指して言及している。名だけでは区別できないため、この項目で整理しておく必要がある。
文化的足跡
日本語圏でこの名が挙げられるのは、ほぼ例外なくエジプトの女王を指す場合である。ギリシア神話の複数の女性がこの名を負っていることは、ほとんど知られていない。
プトレマイオス朝の女王たちがこの名を用いたのは、マケドニア王家に伝わる名であったためである。神話上の名と、ヘレニズム期の王家の名が、同じ語を共有している。