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大アイアース
PLATE — ΑἼΑΣ
HELLAS · ギリシア神話
ΑἼΑΣ

大アイアース

アイアース · アイアス · アイアース(大)

Ptyx CC BY-SA 3.0

サラミスの王でアキレウスに次ぐギリシア軍第二の戦士。アキレウスの武具争いに敗れて狂気に陥り、自らの剣に伏して死んだ。

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解説

概要

大アイアース(Αἴας / Aias。ラテン語 Aiax)は、サラミス王テラモーンの子で、トロイア戦争におけるギリシア軍第二の戦士である。ロクリス人の小アイアースと区別するためにこう呼ばれる。

『イーリアス』は彼を「アカイア勢の砦」と呼ぶ。七枚の牛革を重ねた巨大な楯を持ち、退くことなく戦線を支える。他の英雄と違い、彼を助ける神が一人もいないことが特徴である。アキレウスには母テティスが、オデュッセウスにはアテーナーが付くが、彼は自分の力だけで戦う。この孤立が、そのまま最期の孤立につながる。

神話・物語

ヘクトールの呼びかけた一騎討ちに籤で選ばれ、日暮れまで戦って決着がつかず、互いに贈り物を交換して別れた。ヘクトールは剣を、彼は帯を贈る。のちにこの剣で彼は自らを刺し、ヘクトールはその帯で戦車に繋がれて引き回される。贈り合った品が双方の死の道具になるという構成である。

ギリシア勢が船まで追い詰められたときには、船から船へ跳び移って火を防いだ。パトロクロスの遺体をめぐる戦いでも中心となり、アキレウスが討たれたときはその遺体を担いで戦場を離脱した。

戦後、アキレウスの武具の帰属をめぐってオデュッセウスと争う。判定は弁論によって行われ、彼は敗れた。判定者をトロイアの捕虜とする版、アテーナーが介入したとする版がある。ソポクレース『アイアース』はここから始まる。

剣を抜いて向き合う二人の戦士と、そのあいだに立って二人を分ける人物を描いた黒絵の壺
アキレウスの武具をめぐるアイアースとオデュッセウスの争い(タレイデスの画家、アッティカ黒絵式オイノコエー、前520年頃、ルーヴル美術館)Jastrow / パブリックドメイン — Wikimedia Commons

恥辱に耐えかねた彼は、夜半に将たちを討ちに出た。女神が狂気を送ったため、彼が斬り伏せたのは家畜の群れであった。正気に戻り、自分が何をしたかを知った彼は、ヘクトールから贈られた剣を地に突き立て、その上に身を投げる。妻テクメーッサと弟テウクロスが遺体を見つけ、アガメムノーンは埋葬を禁じるが、オデュッセウスが取りなして埋葬が許された。争った相手が最後に弁護するという結末である。

剣に貫かれて仰向けに横たわる男に、女性が布を掛けようとする場面を描いた杯の円形内面
アイアースの遺体に布を掛けるテクメーッサ(ブリュゴスの画家、アッティカ赤絵式キュリクス内面、前490〜480年頃、ゲティ美術館)J. Paul Getty Museum / CC0(パブリックドメイン) — Wikimedia Commons

流れた血から花が咲き、花弁に「アイ・アイ」(ああ、ああ)という嘆きの文字が読めたと伝えられる。同じ文字はヒュアキントスの血から咲いた花にも読めるとされ、二つの伝承は重ねられている。

『オデュッセイア』第11巻では、冥界を訪れたオデュッセウスが彼の亡霊に語りかける。彼は一言も答えず、黙って闇へ去った。ホメーロスの描く死者のなかで、口をきかないのは彼だけである。

図像と象徴

古代美術が繰り返し描いたのは自殺の場面である。本ページの主画像は前530〜525年頃のアッティカ黒絵式アンフォラ(エクセキアス作、ブーローニュ=シュル=メール城博物館)で、剣を地に据えて身を投げる直前の彼を描く。倒れた姿でも刺し貫かれた姿でもなく、武具を脱いで一人で準備をする瞬間を選んだこの構図は、古代陶画の到達点として名高い。

アキレウスの遺体を担ぐ場面も、前6世紀の黒絵式から繰り返された。彼が図像として選ばれるのは、いずれも死をめぐる場面である。

大きな楯を負った戦士が死んだ戦士を肩に担ぎ、左右に神々が立つ黒絵の壺
アキレウスの遺体を担ぐアイアース(アンティメネスの画家、アッティカ黒絵式頸部アンフォラ、前520〜510年頃、ルーヴル美術館)Jastrow / パブリックドメイン — Wikimedia Commons

系譜と関係

父テラモーン、母はエリボイア(ペリボイアとも)。異母弟テウクロスは、テラモーンとトロイア王女ヘーシオネーの子である。父方の祖父アイアコス、ペーレウスは伯父にあたり、したがってアキレウスとは従兄弟である。

ヘーラクレースが誕生を祝い、ゼウスに祈って獅子の皮に包んだため、皮に覆われた部分が不死身になったという伝えがある。この場合、彼が自らの剣で死ねたのは、覆われていなかった箇所を突いたからということになる。

文化的足跡

サラミス島には彼を祀るアイアンテイオンがあり、アイアンテイア祭が行われた。アテーナイの十部族の一つアイアンティスは彼の名を負い、サラミス島の領有をめぐるメガラとの争いでは、アテーナイ側が『イーリアス』の船の一覧の一句を根拠に用いたと伝えられる。神話上の英雄の帰属が、実際の領土紛争の論拠になっている。

ソポクレース『アイアース』は現存する最古のギリシア悲劇の一つとみられ、恥と名誉をめぐる主題によって近代でも上演が絶えない。米国では退役軍人の心的外傷を扱う上演企画に用いられている。

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領分・別名

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。

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資料

Wikidata
Q172725 — 骨格データの出典
Commons
Ajax the Great — 図像カテゴリ