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ヨルムンガンド
PLATE — JǪRMUNGANDR
NORÐR · 北欧神話
JǪRMUNGANDR

ヨルムンガンド

ミドガルズオルム · ミズガルズの大蛇 · 世界蛇

AM 738 4to, 43r(アイスランド、1680年頃) PUBLIC DOMAIN

北欧神話の大蛇。ロキと女巨人アングルボザの子で、人間の世界ミズガルズを取り巻いて自らの尾をくわえる。その尾を放すときラグナロクが始まり、宿敵トールと刺し違えて滅ぶ。

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解説

概要

ヨルムンガンド(古ノルド語: Jǫrmungandr)は、北欧神話の大蛇である。名は jǫrmun-(巨大な)と gandr に分解できるが、gandr は蛇・杖・魔力を帯びた細長いものを広く指す語で、一語の定訳を当てにくい。もう一つの呼び名ミズガルズオルム(Miðgarðsormr、ミズガルズの蛇)のほうが、役どころを端的に言い当てている。人間の世界ミズガルズを取り巻く外海に横たわり、自らの尾をくわえて円環をなす。ロキと女巨人アングルボザの子で、狼フェンリルと冥界の女主人ヘルの同胞にあたる。

北欧神話の怪物のなかで、この蛇の位置は特異である。倒すべき敵であると同時に、世界の縁を締める箍でもある。尾を放すことが破局の合図になるのは、それを裏返しに述べたものだ。

登場する物語

典拠は『エッダ』——『ギュルヴィたぶらかし』を含む『スノッリのエッダ』と、『古エッダ』所収の『ヒュミルの歌』『巫女の予言』——およびスカルド詩『フースドラーパ』『ラグナルスドラーパ』に分かれる。伝わる話は三つである。

『ギュルヴィたぶらかし』第34章によれば、ロキの子らが災いとなることを見抜いたオーディンは、ヨルムンガンドを海へ投じた。蛇は海底で育ち、ついにミズガルズを一周して自らの尾をくわえるまでになる。

第46章では、トールが巨人の王ウートガルザ・ロキの館で「この猫を持ち上げよ」と挑まれ、力を尽くしても前足一本を床から離すのがやっとだった。後に明かされるところでは、その猫は幻術で猫に見せられたヨルムンガンドであり、トールは蛇を天に届くほど引き伸ばしていた。あと少し持ち上げていれば、世界の境界が変わっていたという。

三つめが釣りの話で、ここで伝承が二つに割れる。『ヒュミルの歌』第22〜24節と『ギュルヴィたぶらかし』第48章では、トールが巨人ヒュミルと沖へ漕ぎ出し、牡牛の頭を餌に蛇を釣り上げる。『ギュルヴィたぶらかし』では船が沈むのを恐れたヒュミルが糸を切り、蛇は海へ戻る。『ヒュミルの歌』でも、蛇は頭に一撃を受けながら海中へ逃れる。ところが、より古いスカルド詩はトールが蛇の頭を打ち砕いて仕留めたと歌う。スウェーデンのアルトゥーナのルーン石碑には、トールが独りで釣る場面が刻まれている。糸を切る巨人がいない——成功した版の絵である。どちらかが誤りなのではない。釣りの話には、殺す版と逃す版の二系統が並んで伝わっている。

図像と象徴

主画像は17世紀アイスランドの写本 AM 738 4to(43葉表)の挿絵で、蛇が円を描いて自らの尾を噛む。地中海のウロボロスと同じ図であり、円環=閉じた世界という理解が北方でも同じ形をとったことを示す。

もっとも、北欧美術がこの蛇を描くとき好んだのは円環ではなく釣りの場面だった。スウェーデンのアルトゥーナ石碑とアルドレ VIII 号絵画石、デンマークのヒョルドゥム石、イングランド・カンブリアのゴスフォースの石板(ゴスフォース十字架と同じ教会にある)がそれである。アルドレ VIII 号は8〜10世紀に置かれ、『スノッリのエッダ』の成立(1220年頃)より数百年早い。解釈が正しければ、この話は数世紀のあいだほぼ形を変えずに伝わったことになる。図像が文献の年代を追い越して神話の古さを保証する、数少ない例である。

牡牛の頭を垂らした釣り糸、大きく開いた顎、振り上げられた槌ミョルニル——この三つが揃えば、見る者には場面がわかった。図像は物語の要約として機能している。

関係する神格・退治した英雄

親はロキとアングルボザ、同胞はフェンリルとヘル。宿敵は雷神トールで、両者は三度出会い、三度目に相討ちとなる。『巫女の予言』と『ギュルヴィたぶらかし』第51章によれば、ラグナロクの到来とともに蛇は尾を放して陸へ上がり、海が地を洗う。ムスペルの子らと合流してヴィーグリーズの野で神々と対峙し、トールはこれを討ち取るが、浴びた毒のために九歩あゆんで倒れる。

トールの釣りは、ヴェーダのインドラが竜ヴリトラを討つ話や、バルト・スラヴの嵐神と蛇の対決と並べて論じられてきた。ただし比較が示すのは印欧語圏に広がる話型であって、同じ神・同じ蛇の系譜ではない。ジョン・リンドウは、尾を噛んで自らを縛る蛇と、鎖に縛られたフェンリルとを、「縛られた怪物がやがて解き放たれる」という北欧神話の反復する主題として結んでいる。

文化的足跡

ヴァイキング時代の護符と絵画石に始まった図像は、19世紀のロマン主義絵画が大きな画題として引き取った。ヘンリー・フュースリの《トールとミズガルズの蛇の戦い》はその代表で、荒れる海から立つ蛇の頭に槌を振り上げる構図が、以後の挿絵の型になった。現代ではゲーム『God of War』シリーズ(2018年、2022年)などにも登場する。

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領分・別名

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承点線=異伝・別系統

アングルボザ
収載データなし
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資料

Wikidata
Q181227 — 骨格データの出典
Commons
Jörmungandr — 図像カテゴリ