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ウートガルザ・ロキ
PLATE — ÚTGARÐA-LOKI
NORÐR · 北欧神話
ÚTGARÐA-LOKI

ウートガルザ・ロキ

ウトガルザ・ロキ · ウトガルド・ロキ · ウートガルティロキ

ルイ・ユアール画(A&E・キアリー『アースガルズの英雄たち』1900年刊所収) PUBLIC DOMAIN

北欧神話の巨人の王。幻術を操り、スクリューミルに化けてトール一行を欺いた。負けたと思わせた勝負の相手が、海・老い・世界蛇であったと最後に明かす。

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解説

概要

ウートガルザ・ロキ(Útgarða-Loki)は、北欧神話に登場するヨトゥンの王。名は「ウートガルズ(外なる囲い)のロキ」を意味する。幻術(sjónhverfingar、目くらまし)を得意とし、トールの一行を一夜にわたって欺いた。神々の敵として力で立ちはだかるのではなく、認識を操ることで勝つ——北欧神話でも特異な巨人である。

ロキとは名を共有するだけの別人であり、両者を混同してはならない。

登場する物語

ギュルヴィたぶらかし』第45章から第47章が、この巨人をめぐるほぼすべてである。

トールがロキと従者シャールヴィ、その妹レスクヴァを連れてヨトゥンヘイムへ向かう途中、山かと見紛う巨体の男に出会う。名をスクリューミルと名乗るその男は、一行を連れて歩き、自分の食糧袋を渡す。トールは袋の口を解けない。夜、いびきに耐えかねたトールはミョルニルで男の頭を三度打つが、そのたびに男は目を覚まして、木の葉が落ちたか、団栗が落ちたかと言うばかりだった。

ウートガルズの城に着くと、主人ウートガルザ・ロキは一行の小ささを嘲り、何か芸を見せよと言う。ロキは大食を挑み、ロギ(野火)と競って敗れる。ロギは肉も骨も木の器も食い尽くした。シャールヴィは駆け比べを挑み、フギ(思考)に三度とも及ばない。トールは角杯を渡され、三口で飲み干せと言われて飲みきれない。次に床の灰色の猫を持ち上げよと言われ、力を尽くしても前足一本を離すのがやっとだった。最後に組打ちを望み、主人の養い親である老婆エリに片膝をつかされる。

翌朝、城の外まで見送った主人が種を明かす。スクリューミルは自分だった。食糧袋は鉄線で縛ってあった。三度の打撃は山に三つの四角い谷を刻んだ。ロギは野火そのもの、フギは自分の思考、角杯は海に通じており、トールが飲んだぶんだけ潮が引いた。猫は世界を取り巻く蛇ヨルムンガンドで、その背が天に届くほど持ち上がったとき、一座は震え上がった。老婆は老いである。そしてもう二度と来てくれるなと言い残す。トールが槌を振り上げたときには、城も主人も消えていた。

この物語の全体が、負けたと思っていた側が実は驚異的だったと告げられる構造になっている。読者は最後の数段落で、それまで読んできた場面をすべて読み直すことになる。

図像と象徴

異教期の造形はない。近代の挿絵はもっぱらスクリューミルの姿を描く。ルイ・ユアールが『アースガルズの英雄たち』(1900年)に寄せた一葉は、頭に手をやって身をかがめる巨大なスクリューミルと、その足元で槌を提げて見上げる小さなトールを描く。打たれたことに気づかず、木の葉でも落ちたかと頭を撫でている——原典が繰り返す滑稽な仕草が、そのまま図になっている。アーサー・ラッカムも同じ場面を残した。

本サイトの主画像も、この巨人が変装しているところである。これは奇妙な事態にみえるが、原典に忠実でもある。ウートガルザ・ロキとして描かれた姿はそもそも本当の姿ではない。この巨人の属性は、姿を持たないことそのものだからである。

サクソ・グラマティクスの伝える姿は、まったく別の相を見せる。『デンマーク人の事績』第8巻のウートガルティロキは、洞窟の奥で手足を重い鎖につながれた巨大な存在であり、その毛髪も髭も耐えがたい悪臭を放つ。訪ねたトルキルは証拠に髭を一本抜いて帰るが、その臭気で周囲の者が数名死ぬ。エッダの、涼しい顔で神を騙す主人とは似ても似つかない。同じ名の下に、二つの伝承が並んでいる。

関わる神格・伝承

館の者として、ロギ(野火)、フギ(思考)、老婆エリ(老い)が登場する。いずれも自然現象や抽象概念の擬人化であり、この巨人の勝負は最初から人ならざる相手を差し向けるものだった。灰色の猫はヨルムンガンドである。

トールとの関係は、他の巨人たちとは性質が違う。ヒュミルやスリュムのように打ち倒される相手ではなく、勝負のあとで正体を明かして立ち去る。トールの槌が届かなかった数少ない敵である。

サクソ版では、ゴルモ王が航海の危難に際してこの存在に犠牲を捧げて祈り、天候の回復を得たとされる。神格として祀られた形跡が、エッダとは別系統の資料に残っていることになる。

文化的足跡

ウートガルズ訪問譚は、北欧神話のなかでも最も物語として完成された部分の一つとされる。伏線と種明かしという構造を持つため、近代の再話や児童向けの本で繰り返し取り上げられてきた。

同時に、この完成度そのものが議論の的でもある。スノッリはこの物語の典拠となる古い詩を一つも引用しておらず、彼自身の構成が大きく入っている可能性が指摘されている。13世紀のアイスランドの著述家が、異教の伝承を素材にどこまで作品を組み立てたのか——ウートガルザ・ロキは、その問いが最も鋭く立つ場所にある。

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領分・別名

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資料

Wikidata
Q594745 — 骨格データの出典
Commons
Útgarða-Loki — 図像カテゴリ