アングルボザ
アングルボダ · Angrboða · Angrboda
北欧神話の女巨人でロキの伴侶。名は「悲しみをもたらす者」の意。狼フェンリル、蛇ヨルムンガンド、冥界のヘルの母とされる。神々は三体を恐れ、ヨルムンガンドを海に、ヘルをニヴルヘイムに送り、フェンリルを縛った。鉄の森の老女と同じとみる説がある。
解説
概要
アングルボザ(Angrboða)は、北欧神話に登場するヨトゥン(巨人)の女で、ロキの伴侶である。狼フェンリル、ミズガルズの蛇ヨルムンガンド、冥界の女王ヘルの三体の母とされる。
名の前半は「苦しみ、悲しみ」を、後半は「差し出す」を意味する語に由来し、「悲しみをもたらす者」などと訳される。この名は12世紀より前には遡らない新しい創作とみる研究者もいるが、ロキと巨人の女から三体の怪物が生まれたという伝承そのものは、より古い可能性がある。
神話・物語
『古エッダ』では、『ヒュンドラの歌』に含まれる『巫女の短い予言』に一度だけ、ロキがアングルボザに狼(フェンリル)を生ませたと記される。
『スノッリのエッダ』の「ギュルヴィたぶらかし」は、彼女を「ヨトゥンヘイムに住む女巨人」とし、ロキとのあいだの三体の子を挙げる。神々は、母の、とりわけ父の性質ゆえに、この子らから災いが来ると恐れた。オーディンは三体を連れて来させ、ヨルムンガンドを海に投げ、ヘルをニヴルヘイムに送り、フェンリルは神々のもとで育てたのちに縛った。三体はラグナロクにおいて神々と戦う。
『巫女の予言』40節は、鉄の森(ヤールンヴィズ)に住んでフェンリルの一族を育てた老女を歌い、これをアングルボザとみる研究者が多い。「ギュルヴィたぶらかし」も、鉄の森には女巨人たちが住み、その一人が狼の姿の巨人の子らを生んだと語る。
『巫女の短い予言』には、ロキが焼け残った女の心臓を食べて身ごもり、女の怪物たちを生んだという節もあり、この女をアングルボザとする解釈がある。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
系譜と関係
伴侶はロキ、子はフェンリル、ヨルムンガンド、ヘル。ロキにはもう一人、アース神族の妻シギュンがあり、そのあいだの子はナリ(ナルヴィとも)とヴァーリである。
文化的足跡
近年の北欧神話の再話では、アングルボザは主要な人物として描き直されることが多い。ジェネヴィーヴ・ゴルニチェクの小説『魔女の心臓』(原題 The Witch's Heart、2021年)はその一例である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。