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ヘル
PLATE — HEL
NORÐR · 北欧神話
HEL

ヘル

ヘラ · ヘルヘイムの女王 · Hela

ヨハネス・ゲールツ画(1889年) PUBLIC DOMAIN

北欧神話で死者の国を統べる女性。ロキの娘で、フェンリルとヨルムンガンドの姉妹。体の半分が黒く半分が肉色をしていると伝えられ、バルドルの帰還を拒んだ。

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解説

概要

ヘル(Hel)は、北欧神話で死者の国を統べる女性。同名の場所——死者の国ヘル——の名でもあり、存在と場所を同じ語が指す。ロキと女巨人アングルボザの娘で、狼フェンリルと大蛇ヨルムンガンドの姉妹にあたる。

名はゲルマン祖語の *haljō「隠された場所、地下界」に遡り、これは「覆う、隠す」を意味する *helan- からの派生である。さらに印欧祖語の語根 *ḱel-「覆う、隠す」に行き着き、ラテン語 cēlō、ギリシア語 kalúptō と同じ根を共有する。英語の hell はこの語であり、hall、そしてヴァルハラの -hǫll も同根である。死者の国の名は、地獄でも冥界でもなく、まず「隠されたところ」であった。

神話・物語

人格をもつヘルの描写は、そのほとんどが13世紀の『ギュルヴィたぶらかし』に由来する。それによれば、オーディンはロキの三人の子が禍をもたらすとの予言を知り、ヨルムンガンドを海へ、フェンリルを縛めへ、そしてヘルをニヴルヘイムへ投げ落として、九つの世界を治める権を与えた。彼女に送られるのは、病と老いで死んだ者たちである。戦で死んだ者はオーディンフレイヤが分け取るから、ヘルの取り分は残りということになる。

その館の調度には、すべて名がある。館はエーリューズニル(「雨に濡れたもの」)、皿は「飢え」、小刀は「飢饉」、下男はガングラティ、下女はガングレト(いずれも「のろのろ歩く者」)、敷居は「躓きの石」、寝台は「病床」、帳は「輝く災い」。姿は半分が黒く半分が肉色で、それゆえ見分けやすく、表情は暗く険しいという。地獄の責め苦ではなく、うんざりするほど陰気な家——それがスノッリの描く死者の国である。

最もよく知られるのはバルドルをめぐる場面である。フリッグの願いを受けてヘルモーズが馬スレイプニルで下り、バルドルの返還を求めると、ヘルは条件を出した。生きとし生けるものすべてが彼のために泣くならば返そう、一人でも拒む者があれば手放さない、と。世界は泣いたが、女巨人セックだけが泣かず、「ヘルには彼女のものを持たせておけ」と言い放った。ヘル自身は約束を破っていない。バルドルが戻らなかったのは、条件が満たされなかったからである。ラグナロクでは、ロキとともに「ヘルの民」が戦場ヴィーグリーズへ押し寄せる。

ただし、これより古い資料でのヘルは輪郭がぼやける。9世紀の『ユングリング家の数え歌』は、王が死ぬことを「ヘルが取った」「ヘルへ向かった」と繰り返し表現し、ヘルを「塚の番人」「ビュレイストの兄弟の娘」と呼ぶ。10世紀のエギル・スカラグリームソン『息子を失って』も同様である。これらが人格を指すのか場所を指すのかは、詩の言い回しからは決めがたい。ヘルはもともと場所の名であって、人格は後から生じた擬人化にすぎないとする説が有力なのは、このためである。

サクソ・グラマティクスの『デンマーク人の事績』では、瀕死のバルデルスの枕辺に「死の女神」プロセルピナが立ち、三日後に抱きしめると告げる。ローマの冥界の女王の名で呼ばれてはいるが、ヘルに相当する存在と見るのが通例である。

図像と象徴

徴は身体そのものにある。半分が黒く、半分が肉の色。持物も乗り物もなく、境界を体に刻んだ姿だけが伝えられている。生と死の両方を一つの身体に収めるという発想は、北欧神話の他の神格には見られない。

移住期の金製ブラクテアートのうち、IK 14 と IK 124 と呼ばれる二点には、坂を下る騎手と、笏あるいは杖を持つ女性が刻まれている。下り坂が死者の国への道を、女性がその支配者を表すとして、ヘルの図像と見る説がある。バルドルの死を描くとされるB型ブラクテアート——ファクセ出土のものが最もよく知られる——の三人目をヘルと見る読みもあるが、ロキとする説と割れている。いずれも銘のない図像であり、確定はしていない。

近代の図像は、スノッリの一行——半分が黒く半分が肉色——を起点とする。ヨハネス・ゲールツが1889年に描いたヘルは、杖を持ち、崖の上に犬(ガルムと解される)を従え、背後の根のあいだに蛇が這う。ジョン・チャールズ・ドルマンが1909年にヘルモーズの謁見を描いたものと並んで、今日の造形の原型になった。二色に塗り分けられた顔という描き方は20世紀に定着し、現代の創作にも受け継がれている。

系譜と関係

父はロキ、母は女巨人アングルボザ。兄弟はフェンリルとヨルムンガンド。ロキを指すケニングに「ヘルの縁者」「ヘルの父」があり、バルドルを指すケニングに「ヘルの友」があるのは、この系譜による。スカルド詩は「ヘルに与えられる」を死そのものの言い換えとして用いた。

死神・冥界神の横断ファセットのなかで、ヘルの位置はやや特異である。ギリシアのハーデースやエジプトのオシリスが死者を裁くのに対し、ヘルは裁かない。生前の善悪によって行き先が変わるという記述もない。彼女の役割は、送られてきた者に宿と食事を割り当てることであって、審判ではない。ヨトゥンの血を引きながら神々に権を与えられているという立場も、敵とも味方とも言いがたい。

文化的足跡

この語の最も大きな痕跡は、英語のなかにある。ゲルマン語の *haljō はキリスト教化にともなってラテン語 infernus の訳語に転用され、古英語 hell を経て今日の hell になった。キリスト教の地獄を指す英単語が、ゲルマンの死者の国の名から取られているのである。ドイツ語 Hölle、オランダ語 hel も同じ経路をたどった。訳語として選ばれた瞬間に、罰と業火の含意が後から流し込まれたことになる。

近代の創作では、ヘルはしばしば「北欧の死の女神」として、審判者や悪役の位置に置かれる。原典のヘルが誰も裁かず、約束をきちんと守る存在であることは、あまり顧みられていない。

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領分・別名

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承点線=異伝・別系統

アングルボザ
収載データなし
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資料

Wikidata
Q191589 — 骨格データの出典
Commons
Hel (being) — 図像カテゴリ