パエトーン
パエトン · ファエトン · Phaethon
太陽神ヘーリオスの子。出自を証すため父に太陽の戦車を一日御することを求め、制御を失って天を焦がし大地を焼いた。ゼウスの雷霆に撃たれてエーリダノス川に落ち、嘆いた姉妹ヘーリアデスはポプラに、その涙は琥珀になった。
解説
概要
パエトーン(Φαέθων / Phaethon)は、太陽神ヘーリオスの子で、父の戦車を一日だけ御することを願い、制御を失って天地を焼いた若者である。名は「輝く者」を意味する。母はオーケアニスのクリュメネー。
神話・物語
物語を最も詳しく語るのはオウィディウス『変身物語』第1〜2巻である。イーオーの子エパポスに出自を疑われたパエトーンは、母に促されて東の果てにある父の宮殿を訪ねた。ヘーリオスは子と認め、証として何でも一つ願いを叶えると冥河にかけて誓った。
パエトーンが求めたのは、太陽の戦車を一日走らせることであった。父は、道の険しさと馬の荒さを並べて思いとどまらせようとしたが、誓いを取り消すことはできなかった。
御者の軽さを感じ取った馬は道を外れた。高く昇れば天が焦げ、低く降りれば山々が燃え、川が干上がった。リビュアが砂漠になり、アイティオピアの人々の肌が黒くなったのはこのときだと説明される。大地の訴えを受けたゼウスは雷霆でパエトーンを撃ち、若者は炎に包まれてエーリダノス川に落ちた。

嘆き続けた姉妹たち——ヘーリアデス——はポプラの木に変わり、その涙は琥珀になった。パエトーンの友キュクノスも嘆きのあまり白鳥に変えられた。
この話はオウィディウスより古く、アイスキュロスの『ヘーリアデス』、エウリーピデースの『パエトーン』(いずれも断片のみ)がすでに扱っている。
図像と象徴
本サイトの主画像は、ドミニク・ルフェーヴルの大理石像《パエトーンの墜落》(1700〜11年頃、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館蔵)で、馬とともに真っ逆さまに落ちる若者を表す。
ローマ時代の石棺浮彫には、雷に撃たれて落ちる御者、混乱する四頭の馬、嘆く姉妹たちが一続きに彫られる。天から落ちる人物像は、ルネサンス以降ミケランジェロの素描やルーベンスの油彩で繰り返し描かれ、驕りと失墜の寓意として用いられた。


系譜と関係
父はヘーリオス、母はクリュメネー。姉妹はヘーリアデス。友はキュクノス。父の許しを得て身の丈を越えた点で、父の忠告に背いて飛んだイーカロスと並べて語られることが多い。
文化的足跡
小惑星(3200)ファエトンは近日点で太陽にきわめて近づく天体で、ふたご座流星群の母天体として知られる。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。