キオネー
キオネ · キオーネー · Chione
ギリシア神話で「雪」を意味する名。ボレアースの娘(エウモルポスの母)、ダイダリオーンの娘(アウトリュコスの母)など、同名の人物が四人ほど知られる。
解説
概要
キオネー(Χιόνη)は、ギリシア神話に現れる複数の女性の名である。ギリシア語のキオーン(χιών、「雪」)に由来する。
同名の人物が四人ほど知られている。
同名の女性たち
北風の神ボレアースとアテーナイの王女オーレイテュイアの娘のキオネーは、ボレアダイやクレオパトラーの姉妹にあたる。ポセイドーンに愛されてエウモルポスを産んだが、父に知られることを恐れて、子を海へ投げ捨てた。ポセイドーンがこれを救い、エウモルポスはのちにエレウシースの祭儀の祖とされた。
ダイダリオーンの娘のキオネーは、その美しさのために、一日のうちにヘルメースとアポローンの両方に愛され、二人の子を産んだ。ヘルメースとのあいだの子が盗みの名手アウトリュコス、アポローンとのあいだの子が楽人ピラムモーンである。キオネーは自分の美しさがアルテミスにまさると誇ったため、女神の矢に舌を射抜かれて死んだ。父ダイダリオーンは嘆きのあまりパルナッソス山から身を投げ、アポローンによって鷹に変えられたという。
このほか、雪雲に変えられたカッリロエーの娘のキオネー、ボレアースにさらわれて三人の子を産んだアルクトゥーロスの娘のキオネーが知られている。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
名が「雪」を意味することは、これらの人物のいくつかに共通する性格を示す。ボレアース——北風——の娘であること、雪雲に変えられること、そして冷たさと美しさの結びつき。雪という語が女性名として繰り返し用いられた背景には、この連想があったと考えられる。
ダイダリオーンの娘の物語は、ニオベーの物語と同じ型に属する。神に優ると誇った者が、その神の矢で罰せられる。ギリシア神話が繰り返し語るヒュブリス(傲慢)の主題である。
関わる神格・伝承
ボレアースの娘としてはボレアース、ボレアダイ、オーレイテュイア、エウモルポスの項に、ダイダリオーンの娘としてはアウトリュコス、プリアーポスの項に登場する。
なおプリアーポスの母をキオネーとする伝えもあるが、この場合は父をディオニューソスとする。どのキオネーを指すかは明示されない。
文化的足跡
小惑星帯の6261番小惑星キオネーは、この名にちなむ。1976年に発見された火星横断小惑星である。
日本語圏でこの名が挙げられることはまずない。エウモルポスの母、あるいはアウトリュコスの母として言及される程度である。ギリシア神話において「雪」という語が女性名として用いられ、しかも複数の人物に与えられているという事実は、この体系における命名の作法を示している。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。