バブルヴァーハナ
マナルーラ王 · マニプラ王 · チトラーンガダーの子
アルジュナとチトラーンガダーの子でマニプラの王。馬祀祭の途上で父と戦って討ち取り、ウルーピーの宝珠が父を蘇らせている人物。
解説
概要
バブルヴァーハナ(Babhruvāhana / बभ्रुवाहन)は『マハーバーラタ』に登場する人物で、アルジュナとマナルーラ(マニプラ)の王女チトラーンガダーの子である。母方の王国を継いで王となった。クルクシェートラの戦いには参加しないが、戦後の馬祀祭において父と戦い、これを討ち取る役を担う。父を殺した子が、継母の力によって父を蘇らせるという構成をもつ。
神話・物語
出生は第一巻アーディ・パルヴァに語られる。インドラプラスタからの一年の追放中、アルジュナはチトラヴァーハナ王の治めるマナルーラに至った。この王家はプラバンジャナがシヴァに苦行を捧げて得た恩寵により、代々必ず男子を得るはずであったが、王には娘しか生まれなかった。そこで王は娘チトラーンガダーをプトリカー——その子が祖父の王国を継ぐ娘——として育てていた。求婚したアルジュナは、生まれる子はマナルーラに留まって母方の祖父の王位を継ぐという条件を呑む。子は父の系譜に連ならないことになる。
三か月ののちアルジュナは去り、生まれた子がバブルヴァーハナである。取り決めのとおり母のもとで育ち、成長して王位に就いた。
第十四巻アシュヴァメーディカ・パルヴァが伝えるのが、父との戦いである。ユディシュティラの宗主権を示すため馬祀祭の馬を追って各地を巡っていたアルジュナが、マニプラと呼ばれるようになったこの都に至った。学者たちを伴って恭しく迎えた子に対し、アルジュナはその武人らしからぬ振る舞いに憤り、クシャトリヤの務めを怠っていると責めて戦いを挑発する。
そこへ現れたのが、ナーガの姫にして継母にあたるウルーピーである。彼女は馬を捕らえて父と戦うよう促した。放たれた矢がアルジュナを射抜き、父は倒れる。駆けつけたチトラーンガダーはウルーピーを責め、子は自らの命を絶とうとしたが、ウルーピーがこれを止め、ナーガの国から宝珠ナーガマニを持ち帰って父の胸に置いた。こうしてアルジュナは蘇る。これはビーシュマを策によって討った罪でヴァス神群がアルジュナにかけた呪いを解くための、ウルーピーの計らいであった。
図像と象徴
固有の像容は伝わっておらず、独立した礼拝像の伝統もない。図像に現れるとすれば、倒れた父の傍らに立つ場面である。象徴となるのは、父を殺すために放たれ、父を蘇らせるために用意された矢と宝珠の対である。
系譜と関係
父はアルジュナ、母はチトラーンガダー。プトリカーの取り決めにより、系譜の上では母方の祖父チトラヴァーハナを継ぐ。継母にウルーピー、異母兄弟にイラーヴァットとアビマニユ。
文化的足跡
12世紀の『ジャイミニーヤ・アシュヴァメーディカ』は彼の役割を大きく拡張した。この版では彼が父の首を刎ね、蘇生のために自ら地下のナーガの国へ攻め入って霊薬と宝珠を奪い取る。父殺しの罪を子自身が贖うという筋立てになっており、原典より能動的な人物として描かれる。
この物語は南インドとオリッサの演劇伝統でとりわけ人気が高く、カンナダ語の演劇『バッブルヴァーハナ』をはじめ、数多くの戯曲と映画の題材となってきた。父と子が名を知らぬまま戦うという主題は、世界各地の英雄譚に並行例があるが、ここでは互いに素性を知ったうえで戦い、なお殺し合うという点で異なる。義務が情に優先する場面として、ダルマをめぐる議論にも引かれる。