ステロペース
アステロペース · ステロペス · Steropes
キュクロープス三兄弟の一人。名は「電光」を意味する。三兄弟の名はいずれも雷の一側面を指す普通名詞をそのまま人名にしたものである。
解説
概要
ステロペース(Στερόπης、「電光」)は、ギリシア神話のキュクロープスの一人である。ウーラノスとガイアの子で、ブロンテース(「雷鳴」)、アルゲース(「輝き」)とともに三兄弟をなす。
アステロペースの形でも伝わる。名はギリシア語のステロペー(στεροπή、電光)に由来する。
神話・物語
ヘーシオドス『神統記』の伝えるところは、三兄弟に共通する。額の中央に一つの目を持ち、ティーターン神族およびヘカトンケイルの兄弟であり、ゼウスに解放された礼として雷霆・三叉の矛・隠れ兜を鍛えて与えた。
そしてのちにアポローンに射殺される。アスクレーピオスを撃った雷霆を作った者への報復であった。
ウェルギリウス『アエネーイス』第8巻に描かれる鍛冶場の場面では、ブロンテース、ステロペース、ピュラクモーンの三人が、リパリ島の洞窟で武具を鍛えている。
図像と象徴
三兄弟を個別に描き分けた古代の作例は知られておらず、本サイトも主画像を掲げない。
この三兄弟をめぐって注目に値するのは、名の構成である。ブロンテー(雷鳴)、ステロペー(電光)、アルゲース(輝き)——いずれもギリシア語で雷の一側面を指す普通名詞であり、それをそのまま人名にしている。ギリシアの神話が抽象を人格化する仕方の、最も単純な例といえる。
第三の名は文献によって揺れる。ヘーシオドスはアルゲースとするが、ウェルギリウスはピュラクモーン(「火の金床」)とし、ヒュギーヌスの写本にはアクモニデースの形も見える。名が入れ替わっても構成——雷を三つに分ける——は変わらない。
関わる神格・伝承
兄弟はブロンテースとアルゲース。両親はウーラノスとガイア。
キュクロープスと呼ばれる存在が三種に分かれること、そしてこの三兄弟がそのうち最も古い層に属することは、アルゲースの項に譲る。
文化的足跡
日本語圏でこの名が単独で挙げられることはまずない。三兄弟をまとめて「ゼウスの雷霆を鍛えた一つ目の巨人」と紹介するのが通例である。
ただし三人に別々の名が与えられているという事実そのものが、ギリシア神話の性格を示している。集団として扱えば足りるはずの存在に、あえて三つの名を配し、それぞれが雷の別の側面を担うようにした。神話が現象を分節する仕方が、この命名に現れている。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。