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シルウァーヌス
PLATE — SILVANUS
ROMA · ローマ神話
SILVANUS

シルウァーヌス

シルウァヌス · シルワヌス · Silvanus

Sailko (2012) CC BY-SA 3.0

ローマの森の神。開墾されない荒地と森林の精であり、のちに牧場と家畜の守護者とされた。碑文の数はローマの神々でも多い。

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解説

概要

シルウァーヌス(Silvanus)は、古代ローマの森の神である。名はシルウァ(森)に由来し、「森の」を意味するにすぎない。本来は開墾されていない荒地と森林そのものに宿る精であり、のちに牧場と家畜の守護者、さらには農地の境を守る神と考えられるようになった。すべての森にその主であるシルウァーヌスが住むとされ、葡萄・麦の穂・豚・乳などが供えられた。

碑文に残る数はローマの神々のなかでも多い部類に入る。国家祭祀の中心にはいなかったが、民衆の信仰としては広く根を張っていた神格である。

神話・物語

固有の物語はほとんど伝わらない。数少ない例外が、王政の終わりに置かれた逸話である。ローマを追われたタルクィニウス・スペルブスがエトルリア軍を率いて攻めてきたとき、戦いの決着がつかぬまま夜になった。そのとき近くの森からシルウァーヌスの声が響き、ローマ軍の勝利を告げたという。姿を見せず声だけで介入する神という点に、森の精としての性格が残っている。

大カトー『農業論』には、家畜の安全を願ってマールス・シルウァーヌス(Mars Silvanus)に供物を捧げる作法が記されている。農耕と牧畜を守る限りにおいて、この神は軍神マールスと結びつけられた。ローマのマールスがもともと農耕の守護でもあったことを踏まえれば、不自然な組み合わせではない。パーンファウヌスとも重ねられている。

出自はエトルリアに遡ると考えられている。エトルリアのセルヴァンスは聖なる境を含む境界を守る神で、名の対応から両者は同源とされる。ただし姿の型は異なる。セルヴァンスが髭のない裸の若者として表されるのに対し、シルウァーヌスは半月鎌を手にした人の好い老人として描かれた。名と職掌が近くとも、造形は別に育ったことになる。

図像と象徴

本項に掲げたのは、ルーマニア国立歴史博物館蔵のシルウァーヌス像(後2世紀から3世紀)である。ローマ帝国の属州にまで祭祀が広がっていたことを示す作例で、この神の像はイタリア半島のみならずダルマティアやパンノニアからも多く出土している。松の冠をかぶった頭部像や、鎌と果実を手にした立像が典型で、樹木そのものを傍らに添える構図も知られる。

犬を連れる型もある。森を歩く者としての姿であり、狩猟神というよりは林や牧地を巡回する者として理解される。

系譜と関係

系譜はほとんど語られない。パーン、ファウヌス、マールスと同一視され、エトルリアのセルヴァンスと同源とされる。ギリシアのシーレーノスと対応させる資料もあるが、これは名の響きの近さに引かれた後代の対応づけであり、シルウァーヌスの名が「森の」を意味するにすぎないことを踏まえれば、系譜的な根拠を欠く。本サイトでは両者を同一視として登録していない。

文化的足跡

英語の sylvan(森の、森に住む)はこの神の名に由来する語で、森を理想化して語る近代の詩の語彙として定着した。人名シルヴァン、シルヴェスターも同じ語根に発する。神格そのものは古代とともに退いたが、語としては森を指す言葉のなかに生き続けている。

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領分・別名

INTERPRETATIO — 同一視・同源
スケッロス ケルト神話 同一視
ウォルムスとアウグストの奉献碑文が「スケッルス・シルウァーヌス」と併記する。またスケッロス名の奉献を欠くガリア・ナルボネンシスでは、シルウァーヌスが槌と壺というスケッロスの持物を帯びて表される(interpretatio romana)。
セルヴァンス エトルリア神話 同源
名の同源性が高いとされる。ただし図像の型は異なり、セルヴァンスが熊皮の帽子をかぶった裸の若者として表されるのに対し、ローマのシルウァーヌスは髭のある年長の男として描かれる。
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資料

Wikidata
Q548445 — 骨格データの出典
Commons
Silvanus — 図像カテゴリ