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ニンスン
PLATE — 𒀭𒊩𒌆𒄢
SVMER · メソポタミア神話
𒀭𒊩𒌆𒄢

ニンスン

ニンスムン · Ninsumun · リマト・ニンスン

Jastrow (2006) PUBLIC DOMAIN

「野牛の貴婦人」を名とするメソポタミアの女神。ウルクの王ルガルバンダの妻でギルガメシュの母とされ、夢を解く力をもつ者として叙事詩に現れる。

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解説

概要

ニンスン(𒀭𒊩𒌆𒄢 dNIN.SUMUN2)は、英雄ギルガメシュの母として最もよく知られるメソポタミアの女神である。名は「野牛の貴婦人」と読まれる。楔形文字の記号 GUL は sun とも sumun とも読まれうるが、いずれの読みでも意味は「野牛」であり、当初は「野牛なる貴婦人」と解され、のちに属格の複合名として理解された。叙事詩は彼女をリマト・ニンスン(野牛のニンスン)と呼ぶ。

ウルクと結ぶ女神として語られることが多いが、祭祀はニップル、ウル、ラガシュ、ウンマなど広い範囲に確認され、主たる祭祀地は KI.KAL と表記される集落であった。初期王朝時代のファラやアブ・サラビフの神名表にすでに名が現れる、古い女神である。ウル・ナンムはウルの彼女の神殿を建て直し、エマフ(荘厳なる家)と名づけた。

ラガシュの文書では彼女はしばしばラマと呼ばれる。ラマとは神格の機能を指す語で、信者に長く豊かな生を授ける守護の働きを意味する。王にラマを授ける女神として理解された例もある。ただしニンフルサグやアルルのような母なる女神と同格に扱われた形跡はない。

神話・物語

ギルガメシュ叙事詩における彼女の役割は、版によって大きく異なる。標準バビロニア版では、彼女は息子の見た夢を解いて来るべき友の到来を告げ、屋上に登って香を焚き、太陽神シャマシュに向かって「なぜ落ち着かぬ心を我が子に与えたのか」と問いかけながら、杉の森へ向かう息子の加護を願う。さらにエンキドゥの首に護符をかけ、彼を養子として家族に迎え入れる。この場面はギルガメシュとエンキドゥの結び付きを制度として認める儀礼にあたる。

これに対し古バビロニア版での彼女はほとんど動かず、その働きはシャムハトの言葉のなかで触れられるにとどまる。ヒッタイト語訳にいたっては彼女の存在そのものが省かれている。物語の重みが版ごとに移り変わることを示す好例である。

シュメール語の詩「ギルガメシュと天の牡牛」にも彼女は現れる。また断片的な古い神話は、ニンスンとルガルバンダの出会いと婚礼を語っており、そこでは花嫁の親の役をアヌンナ神群が務めている。

図像と象徴

彼女に固有の図像として広く受け入れられている作例はごく少ない。ルーヴルが所蔵する浮彫(AO 2761)は伝統的にニンスンの名で呼ばれてきたもので、角冠を戴き、両手に器を捧げ持つ女神が刻まれている。ラガシュの資料が彼女をラマと呼ぶことに対応して、参拝者の手首を取って神の前へ導く女神の図像と結び付ける読み方もあるが、ラマ女神は通例、守護する相手の背後を歩く姿で描かれるため、そのままの当てはめはできない。

象徴として一貫するのは牛である。名そのものが野牛を含み、叙事詩の呼びかけも野牛の語を伴う。ウル・ナンムが彼女の神殿に納めた奉献の粘土板が現存し、円筒印章の銘文にも名が刻まれた。

系譜と関係

ある文書は彼女がアヌとウラシュを父母と呼ぶと記し、ヤコブ・クラインとクラウス・ヴィルケはこれを実際の系譜とみる。一方、婚礼を語る神話でアヌンナ神群が親の役を担うことから、両親は不明とみる立場もある。夫はウルクの伝説的な王ルガルバンダで、アン=アヌム神名表をはじめ多くの神名表が二神を対で記す。

子はギルガメシュだけではない。アン=アヌム神名表は、ギルガメシュとは別に十柱の神を二神の子として並べる。まばらな伝承ではあるが、彼女を死せる神ドゥムジ(タンムーズ)の母とするものもあり、通常その母とされるドゥットゥルとの重なりが生じている。また医薬の女神グラと同一視される例が古バビロニア期からあり、賛歌のなかでは両者が重ねて讃えられた。

文化的足跡

ウル第三王朝の王たちは、ニンスンを自らの神なる母、ギルガメシュを兄と称した。メソポタミア全土を治める根拠を神話の系譜に求めたものと解される。ウル・ナンムとシュルギはいずれも彼女への個人的な帰依を記す碑文を残し、ウルクのシン・カシドもルガルバンダとニンスンを神なる父母と呼んで、二神のための神殿を建てている。プズル・ニンスンという名を負った王子の存在も知られる。

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領分・別名

INTERPRETATIO — 同一視・同源
グラ メソポタミア神話 同一視
ヴァイドナー神名表の二欄本や、ブッルトゥサ・ラビの『グラ讃歌』で両女神は重ねられる。古バビロニア期から確認される習合である。

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承点線=異伝・別系統

エンメルカル
𒀭𒊩𒌆𒄢
ニンスン
メソポタミア神話
ルガルバンダ
配偶者
エンメルカル
𒀭𒊩𒌆𒄢
ニンスン
メソポタミア神話
ルガルバンダ
配偶者
収載データなし
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資料

Wikidata
Q848327 — 骨格データの出典
Commons
Ninsuna — 図像カテゴリ