テオニム THEONYM · 世界神話アーカイブ 神格を検索
PLATE — 𒂗𒆠𒄭
SVMER · メソポタミア神話
𒂗𒆠𒄭

エンキドゥ

エンキドゥー · Enkidu · エアバニ

粘土から造られた野人で、ギルガメシュの友。都の王と対をなす野生の側を体現し、天の牡牛を屠った報いとして命を落とす。その死が叙事詩を不死の探求へ転じさせる。

01

解説

概要

エンキドゥ(𒂗𒆠𒄭 EN.KI.DU10)は、ギルガメシュ叙事詩に現れる野人である。名はシュメール語で「良き地の主」と読まれるのが通例だが、「エンキの造りしもの」とする解釈も提出されている。文書では名の前に神を示す限定符ディンギルが置かれ、神格に属する存在として扱われた。

ただし彼には祭祀がない。神々の一覧に彼の名は載らず、崇拝された形跡も知られていない。ギルガメシュをめぐる物語の外にはほとんど存在しない人物である。例外として、泣き止まぬ乳児を鎮めるための古バビロニア期の呪文に名が現れ、そこでは夜の刻を計る者とされている。叙事詩で夜の群れを守る牧夫を務めたことに由来するとみられる。

彼は西アジア文学における最古の「野人」の形象でもある。都市と野生、文明と自然という対を人物として立てる筋立ては、以後の物語に長く受け継がれた。

神話・物語

シュメール語の五篇の詩では、エンキドゥはギルガメシュの従者として現れる。キシュの王アガとの戦いで武具を整え、杉の森ではフワワの七つの威光を警告し、慈悲に傾く主に代わって怪物の首を落とす。天の牡牛の場面では尾をつかんで押さえ、その頭を主が打ち砕いた。「ギルガメシュ、エンキドゥ、冥界」では、落とした品を取りに冥界へ降り、教えられた禁を破って地上に戻れなくなる。最後の詩を通じて、彼の呼び名は僕から「貴き友」へと変わっていく。

アッカド語の叙事詩では立場が対等になる。暴君ギルガメシュへの拮抗としてアヌが造らせた彼は、獣とともに草を食み水を飲む姿で登場する。神殿の女シャムハトと交わったのち獣は彼を避けるようになり、彼はパンと麦酒を知り、体に油を塗って人となる。ウルクへ上って婚礼の館の戸口で王と組み合い、力を認め合った二人は友となった。

第7書板で、彼は神々の会議の夢を語る。天の牡牛とフンババを殺した報いとして、ギルガメシュかエンキドゥのいずれかが死なねばならず、選ばれたのは自分だった。病に伏した彼は自らを野に導いた猟師と女を呪い、のち女への呪いを撤回し、冥界の夢を語って死ぬ。第8書板はギルガメシュの慟哭と葬礼に費やされる。この死が、以後の物語をすべて不死の探求へ転じさせる。

図像と象徴

エンキドゥ本人と確実に同定できる古代の図像は乏しい。人の頭と腕をもち、角と耳と尾と脚を牡牛とする「牡牛人間」を彼とみる説が繰り返し唱えられてきたが、この形姿はメソポタミア美術で広く用いられる守護的存在のものであり、そのまま彼と結ぶことはできない。ウルの住居址の扉口を飾った前21〜16世紀のテラコッタ浮彫は、しばしば彼の名で呼ばれるが、研究上は柱を支える牡牛人間の神像として扱われている。

これに対し、二人の英雄がフンババを挟んで討ち取る図は、叙事詩の場面がはっきり示されるため同定が可能である。ベルリンの飾板や、北西イランから出た前1200〜800年頃の青銅剣の柄がその例で、そこに描かれる二人の一方が彼にあたる。

系譜と関係

親をもたない。叙事詩では母なる女神アルル(ニンフルサグ)が手を洗い、粘土をつまんで野に投げ、そこから彼が生じたとされる。人としての結び付きはニンスンによって与えられた。彼女はエンキドゥの首に護符をかけ、産んだ子ではないが我が子であると宣して家族に迎える。友であるギルガメシュとの関係は、叙事詩の本文で兄弟とも配偶者とも読める語で語られ、その性格をめぐる議論は今日も続いている。

文化的足跡

19世紀の解読の初期、この名は「エアバニ」と誤読され、そのままの形で当時の紹介書や図版に広まった。野に育った者が女との出会いによって人の世界へ入るという筋立ては、比較文学のうえで繰り返し取り上げられてきた。現代の創作でもギルガメシュと対をなす人物として登場するが、原典で彼が担うのは、王に死を教える者という役どころである。

02

領分・別名

03

資料

Wikidata
Q463220 — 骨格データの出典