ナラカースラ
バウマースラ · ナラカ · プラーグジョーティシャ王
プラーグジョーティシャを治めたとされるアスラ王。大地の女神の子で、クリシュナと妃サティヤバーマーに討たれている。
解説
概要
ナラカースラ(Narakāsura / नरकासुर)は、プラーグジョーティシャ(現在のアッサム地方)を治めたとされるアスラの王である。大地の女神ブーミ(プリティヴィー)の子であることからバウマースラとも呼ばれる。アディティの耳飾りを奪い、一万六千人の女を囚えたとされ、クリシュナと妃サティヤバーマーによって討たれた。その死を祝う日が、ディーワーリーの一日ナラカ・チャトゥルダシーの由来とされる。
神話・物語
出生は、ヴィシュヌの猪身化身ヴァラーハが大地の女神を海底から引き上げた際に生まれた子とする伝えによる。母から生まれたその子は、母である大地の女神以外には討たれないという恩寵を得ていた。
力を得た彼は三界を荒らし、天からアディティの耳飾りを奪い、インドラの傘を取り、諸国から一万六千人の女を攫って囚えた。訴えを受けたクリシュナは、ガルダに乗り、サティヤバーマーを伴って出陣する。大地の女神ブーミの化身であるサティヤバーマーが同行したのは、恩寵の条件を満たすためであった。
戦いのさなか、クリシュナが倒れたと見た彼女は自ら弓をとって射た。恩寵の条件は満たされ、ナラカースラは倒れる。死に際して彼は、自らの死を人々が明かりを灯して祝うよう願ったとも語られる。奪われた耳飾りは返され、囚われていた女たちは解き放たれた。彼女たちは行き場がないとして、クリシュナがすべてを妃として迎えたと伝えられる。
図像と象徴
固有の像容は伝わっておらず、独立した礼拝像の伝統もない。図像に現れるとすれば、ガルダに乗るクリシュナとサティヤバーマーに討たれる場面である。象徴となるのは、母にしか討たれぬという恩寵であり、その条件を満たすために妃が戦場へ赴くという構図が物語の要をなす。
系譜と関係
母は大地の女神ブーミ。父はヴァラーハの姿をとったヴィシュヌとする伝えのほか、ヒラニヤークシャの子とする伝えもある。子はバガダッタで、『マハーバーラタ』ではクルクシェートラの戦いにカウラヴァ側で参戦し、アルジュナに討たれる。
文化的足跡
南インドとネパールでは、ディーワーリーの前日にあたるナラカ・チャトゥルダシー(小ディーワーリー)が、この魔王の討伐を記念する日とされる。未明に油を塗って沐浴し、明かりを灯す習わしがあり、死に際の願いに応えるものと説明される。北インドでは同じ日が別の由来で語られることも多く、祭の起源譚は地域によって異なる。
アッサム州には彼にまつわる地名と伝承が数多く残り、グワーハーティー近郊のカーマーキヤー寺院には、彼が女神を娶ろうとして拒まれた説話が伝わる。中央の神話が地方の伝承と結びついた例として、しばしば取り上げられる。