スラオシャ
スローシュ · ソルーシュ · サローシュ
ゾロアスター教のヤザタ。名は「聞くこと」を意味し、教えに耳を傾け従うことを司る。眠らずに人を守り、死者の魂に付き添って審判の橋を渡る神とされる。
解説
概要
スラオシャ(アヴェスター語 sraoṣ̌a)は、ゾロアスター教のヤザタである。名は「聞くこと」を原義とし、教えに耳を傾けること、すなわち聴従と従順を司る。アムシャ・スプンタの一柱に数える伝えもある。中期ペルシア語でスローシュ、新ペルシア語でソルーシュ。
苦しむ者の叫びを聞き取るアフラ・マズダーの耳とみなされ、良心の声とも呼ばれた。抽象徳目を負う霊が多いこの体系のなかで、この神格は具体的な働きを与えられている点が際立つ。
神話・物語
『ガーサー』にすでに現れ、最も強く、最も堅固で、最も速く、最も畏るべき若者と描かれる。貧しい者が支えを求める相手でもある。三徳の配当では、『ヤスナ』33.14がこの神格を善き行いに配するのに対し、『デーンカルド』3.13–14では善き言葉に移る。祈りの言葉を司る神格としての性格が、伝統のなかで前に出たことになる。
『ヤスナ』56–57章と『ヤシュト』第11がこの神格に捧げられている。そこでは、被造物のうち最初にアフラ・マズダーとアムシャ・スプンタを崇めた者とされ、聖句そのものを身体とし、祈祷文アフナ・ワルヤを武器とすると語られる。眠りに妨げられることなく世界を巡り、人はその守りのもとに生きる。夜半、太陽が沈んだのちに地上へ降り、悪と戦うという。
一貫した敵は、怒りと暴力の魔神アエーシュマである。アエーシュマは家畜への残虐や戦の暴力や泥酔によって、正しい祭祀の意図と意味をゆがめる。アエーシュマの添え名が「血まみれの棍棒の」であるのに対し、この神格の添え名は「強き棍棒の」であり、終末の刷新においてアエーシュマを打ち倒すとされる。『ウェンディーダード』18.22では、炉の火を消そうとする邪竜アジ・ダハーカ——のちのザッハーク——に対して助けを呼ばれる。
図像と象徴
古代イランにこの神格を確実に表した図像は残らない。姿を得るのはむしろイスラーム期の写本挿絵においてで、ペルシア細密画は『シャー・ナーメ』に現れるスルーシュを、翼をもつ天使の姿で描いた。本サイトが主画像に掲げるのは、サファヴィー朝のシャー・タフマースブ本の一葉で、袋小路に追い詰められた王ホスロー2世をスルーシュが救い出す場面である。金地の岩間に翼を広げた人物が立つ構図で、イラン固有の霊がイスラーム美術の天使像として再造形された経緯をよく示している。
系譜と関係
死者の魂がわたる審判の橋チンワト橋の守護者三柱の一。ミスラ、ラシュヌとともに裁きを下すが、魂に付き添って橋をわたるのはこの神格だけである。報いの女神アシとの結びつきは深く、『ヤシュト』17ではアシの「兄弟」と呼ばれる。暦では各月の第17日を司る。
文化的足跡
イスラームがイランに広まったのちも、スルーシュの名は消えなかった。天使ジブリール(ガブリエル)のペルシア語名として用いられ、詩と写本のなかに生き続けている。