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シームルグ
PLATE — سیمرغ
PERSIA · ペルシア神話
سیمرغ

シームルグ

スィーモルグ · スィームルグ · セーンムルウ

Los Angeles County Museum of Art (M.73.5.447) PUBLIC DOMAIN

イラン神話の巨大な霊鳥。世界の海に立つ生命の木に棲み、羽ばたきで万物の種子を散らすと伝えられる。『シャー・ナーメ』では捨て子ザールを育て、その子ロスタムの誕生を助けた。

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解説

概要

シームルグ(ペルシア語 سیمرغ)は、イラン神話に伝わる巨大な霊鳥である。その名は中期ペルシア語のセーンムルウにさかのぼり、さらにアヴェスターの「サエーナ鳥」(mərəγō Saēnō)に行き着く。サエーナはサンスクリットのシュイェーナ(鷲・猛禽)と同源で、もとは大型の猛禽を指す語であった。イランの伝承では一貫して人に善をなす鳥であり、その羽根には傷を癒す力があるとされる。

登場する物語

古い伝承では、シームルグは世界の大海ヴォウルカシャの中に立つ「あらゆる種子の木」に棲む。この鳥が飛び立つたびに枝が揺れて種子が散り、風と雨がそれを地上へ運んで、あらゆる植物が生じたという。水を浄め、地を実らせる鳥である。

よく知られるのは、フェルドウスィーの叙事詩シャー・ナーメが語る一連の挿話である。英雄サームの子ザールは、生まれつき髪が白かったために魔物の子と疑われ、アルボルズ山に捨てられた。泣き声を聞きつけたシームルグは、赤子を巣に運んで雛とともに育てる。やがて父が悔いて山を訪れると、シームルグは青年となったザールを返し、別れぎわに自らの羽根を与えて、危急のときはこれを焚けと告げた。

ザールの妻ルーダーベが難産に苦しんだとき、彼は羽根を焚いた。現れたシームルグは、母の腹を切り開いて子を取り出し、傷を縫って薬を塗り、羽根で撫でよと教える。こうして生まれたのがロスタムである。のちにロスタムがエスファンディヤールとの戦いで深手を負ったときも、シームルグは彼と愛馬ラフシュを癒し、敵の目を射る特別な矢の作り方を授けた。

ただし『シャー・ナーメ』のシームルグは一羽ではない。エスファンディヤールが七つの難行の途上で討ち取る猛禽もシームルグと呼ばれており、ザールを育てた鳥とは別の個体とされる。善なる鳥という性格は、この叙事詩のなかですら一様ではない。

図像と象徴

サーサーン朝の美術に現れるセーンムルウは、鳥そのものではない。犬あるいは狼の頭、獅子の爪、孔雀の尾と翼を組みあわせた合成獣で、銀器・絹織物・漆喰装飾に繰りかえし表された。乳で子を育てる獣の性質と空を飛ぶ鳥の性質をあわせもつと語られたことが、この造形に対応している。王家の意匠としても用いられ、ビザンティンや中央アジアの織物にまで図案が広がった。

イスラーム期のペルシア細密画では姿が変わり、孔雀に似た長い尾を引く巨大な鳥として描かれる。本サイトが掲げるのは16世紀カズヴィーンの写本挿絵で、岩山の巣にザールを抱く場面である。羽根を焚くザールのもとへ舞い降りる場面とともに、繰りかえし主題となった。王に宿る神授の光輝フワルナフがしばしば鳥の姿をとることも、この鳥の性格と響きあっている。

関わる伝承

シームルグはアラビアのアンカー、フェニックス鳳凰グリフォンなどとしばしば比べられ、同じイランの吉兆の鳥フマとは中世以降の建築装飾で区別が曖昧になった。千七百年を生きて自ら火に入るという後代の伝えは、確かに不死鳥の話と重なる。だが起源を同じくするわけではなく、こうした対応は「巨大な霊鳥」という型の反復とみるべきものである。スラヴのセマルグルをこの鳥の系譜に置く説もあるが、確証はない。イランの伝承のなかでこの鳥を他と分けるのは、不死や再生ではなく、育てること・癒すことに性格の中心がある点である。

文化的足跡

12世紀の詩人アッタールの寓意詩鳥の言葉は、この鳥の名に別の意味を与えた。王シームルグを求めて旅立った鳥たちのうち、最後に山頂へ辿り着いたのは三十羽であり、彼らはそこで自分たち自身がシームルグであることを知る。ペルシア語で「三十の鳥」を意味する sī murgh との音の一致にかけた結びで、語源としては誤りだが、詩としては比類なく有名になった。近代以降もイランの文学・美術・意匠に繰りかえし現れ、日本では幻獣事典やゲームを通じて名が知られている。

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領分・別名

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資料

Wikidata
Q548119 — 骨格データの出典
Commons
Simurgh — 図像カテゴリ