アリヤマン
アイリヤマン · エルマーン · Airiiaman
ゾロアスター教のヤザタで、健康と癒しを司る。もとは「共同体の一員」を意味する普通名詞。薬草ではなく聖なる呪文によって病を退けるとされる。
解説
概要
アリヤマン(アヴェスター語 airiiaman)は、もともと「共同体・部族の一員」を意味する普通名詞である。民族名アーリヤに由来する神学的・社会的な語であり、そこから派生して、健康と癒しを司るヤザタの名となった。中期ペルシア語ではエルマーン。
神話・物語
『ガーサー』にこの神格は現れない。そこに出てくる四箇所(『ヤスナ』32.1、33.3、33.4、49.7)では、祭司という社会区分を指す普通名詞として用いられているにすぎない。
神格として働くのは『ウェンディーダード』の創世譚においてである。アフラ・マズダーが世界を創ってまもなく、アンラ・マンユが数えきれぬ病を放った。アフラ・マズダーは、聖なる言葉マンスラ・スプンタ、スラオシャ、そしてこの神格に治療を求める。使者ナイリヨーサンハがその求めを運び、アリヤマンの助力によって一万の薬草が地上にもたらされた。スラエータオナ——のちのフェリドゥーン——が世界の病を癒す手立てを得たのはこれによる。
もっとも、この神格自身は薬草や医術によって癒すのではない。癒すのは聖なる呪文である。『ガーサー』の祈り「アリヤマン・イシュヨ」は、今日この神格への呼びかけと解され、あらゆる病と死を退けるとされる。祈りの正しい唱え方によって真理アシャが保たれるのと同じ理路が、ここでは治癒に適用されている。
『デーンカルド』3.157は、医者が薬草によって癒しうるのはこの神格の助力と友誼によるとし、医の技はこの神格との関係の質に依ると述べる。四千三百三十三種の病を癒す力をもつとも記される。同書8.37.13では、身体の健康をアリヤマンが、霊の健康をアシャ・ワヒシュタが担うと分けられている。
終末においては、火とともに山と丘の金属を熔かして地上に河のごとく流し、人はその流れを通って浄められるとされる。
図像と象徴
この神格を表した像は伝わらない。可視化するのは造形ではなく、唱えられる祈りそのものである。呪文で癒す神に像がないのは、むしろ筋が通っている。
系譜と関係
暦日の献辞をもたない数少ない大きなヤザタの一つで、各月の第3日にアシャ・ワヒシュタとともに呼ばわれる。『ブンダヒシュン』ではこの名が救世主サオシュヤントの添え名としても用いられる。ヴェーダのアリヤマン(アーディティヤ神群の一柱)と同じ語であり、両者の関係は比較神話学の論題であり続けている。
文化的足跡
パーズァンド語の婚礼歌に今日も名が現れ、健康の神が婚姻の守護者として招かれる。その根拠は『ヤスナ』54.1で、そこではこの神格が「結ばれる二人の喜びのために」呼ばわれている。