アンラ・マンユ
アーリマン · アハリマン · Ahriman
ゾロアスター教における破壊の霊。中期ペルシア語でアーリマン。善の創造神アフラ・マズダーに対立する悪の根源で、虚偽(ドゥルジュ)を旨とする。
解説
概要
アンラ・マンユ(Angra Mainyu、中期ペルシア語でアーリマン)は、ゾロアスター教における破壊の霊であり、善の創造神アフラ・マズダーに対立する悪の根源である。その名は「破壊的な霊」を意味し、虚偽(ドゥルジュ)を旨として、真理(アシャ)の秩序に敵対する。
神話・物語
ザラスシュトラの教えでは、世界のはじめに二つの霊が現れ、おのおの真理と虚偽を選んだと説かれる。善なる霊——アフラ・マズダーと同一視されるスプンタ・マンユ——が光と生をもたらすのに対し、アンラ・マンユは闇と死をもたらす。両者の相克こそが世界の歴史であり、人は日々そのいずれに与するかを選ぶよう促される。アンラ・マンユは、病・死・害獣・厳寒などあらゆる災いと、悪しき魔神ダエーワの群れを生み出したとされる。ただし戦いの帰趨は定まっており、時の終わりにアフラ・マズダーが完全な勝利を収め、悪は滅びると教えられる。
異伝もある。3世紀以降のズルワーン主義では、アフラ・マズダー(オフルマズド)とアンラ・マンユ(アーリマン)は、時の神ズルワーンから生まれた双子の兄弟とされた。
図像と象徴
アンラ・マンユそのものを表す古代の図像は乏しい。本サイトが掲げるのは、19世紀の書物に描かれたアーリマンの姿で、後世の想像による造形である。ゾロアスター教は、善と悪をしばしば光と闇、清と濁の対比のうちに象徴的に語った。
関係する存在
アンラ・マンユはアフラ・マズダーの対極として立ち、虚偽の悪霊や魔神ダエーワを配下に従える。ゾロアスター教の伝承では、邪竜アジ・ダハーカ——のちのザッハーク——をその子とする。善なる「不死の聖霊たち」アムシャ・スプンタに、悪しき対応者が一つずつ配されるとも説かれた。これらの物語はペルシア神話の二元論的な世界観をなす。
文化的足跡
善悪二元論と、悪を体現する存在という観念は、後世の宗教思想やマニ教に影響を与えたと論じられている。現代の創作においても、アーリマンの名は悪の根源の代名詞としてしばしば用いられる。