アンラ・マンユ
アーリマン · アハリマン · Ahriman
ゾロアスター教の破壊の霊で、中期ペルシア語でアーリマン。善なる霊に対立して虚偽を選び、アフラ・マズダーの創った地に冬や病などの災いを創り出した。ザラスシュトラを誘惑して退けられ、終末には無へと消し去られるとされる。
解説
概要
アンラ・マンユ(Angra Mainyu、中期ペルシア語でアーリマン)は、ゾロアスター教における破壊の霊であり、善なる神アフラ・マズダーと、その聖なる霊スプンタ・マンユに対立する悪の根源である。名は「破壊的な霊」を意味し、虚偽(ドゥルジュ)を選んで、真理(アシャ)の秩序に敵対する。ペルシア神話の体系に含めて扱う。
神話・物語
ザラスシュトラ自身の作とされる『ガーサー』では、アンラ・マンユはまだ固有名ではない。『ヤスナ』30章3節は、二つの原初の霊を双子として描き、一方が真理を、他方が虚偽を選んだと語る。この節で善なる霊に対するのは「悪しき霊(アカ・マンユ)」であり、45章2節では「より聖なる霊」が、アンラ・マンユを自らのまったき対極と呼ぶ。
後代の『ヴェンディダード』第1章では、アフラ・マズダーが十六の地を創るたびに、アンラ・マンユがそれぞれに冬、病、悪徳などの災いを対抗して創り出す。第19章では、アンラ・マンユがザラスシュトラに善き宗教を捨てれば世界の支配を与えると誘い、拒まれると魔神の軍勢で襲うが、ザラスシュトラはそのすべてを退ける。『ヤスナ』9章8節では、竜アジ・ダハーカを創った者とされる。
中期ペルシア語の『ブンダヒシュン』では、アーリマンは助けなしには生命を創ることができず、オフルマズド(アフラ・マズダー)の優越を知ると逃れて魔神ダエーワを造る。原初の牛を殺すが、月がその種を救い、そこから動物が生じた。終末のフラショーケレティにおいて、アーリマンは打ち負かされた神として従えられるのではなく、無へと消し去られるとされる。
異伝として、ズルワーン主義では、オフルマズドとアーリマンは時の神ズルワーンの双子の子とされた。ズルワーンが千年の犠牲を捧げてオフルマズドを宿し、その疑いからアーリマンが宿った。アーリマンは先に生まれようと胎を裂いて出たため、ズルワーンはその支配を九千年に限ったという。この神話は、サーサーン朝以後のシリア語やアルメニア語の論駁書(コルブのエズニクなど)でしか明確に伝わらない。
図像と象徴
アンラ・マンユそのものを表す古代の図像は乏しい。本サイトが掲げるのは、19世紀の書物に描かれたアーリマンの姿で、後世の想像による造形である。
系譜と関係
アフラ・マズダーとスプンタ・マンユの対極に立ち、魔神ダエーワの群れを従える。竜アジ・ダハーカ(のちのザッハーク)を創った。雨の神ティシュトリヤと戦うが、これを打ち負かすことも雨を妨げることもできなかった。
なおゾロアスター教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格と伝承に関する学術的な整理である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。