マグニ
マグニ · モージとマグニ · Magni
トールと女巨人ヤールンサクサの子。生後三夜でフルングニルの巨大な脚を持ち上げ、父を救った。兄弟モージとともにラグナロクを生き延び、ミョルニルを継ぐとされる。
解説
概要
マグニ(Magni)は、北欧神話の神。名は「力」を意味する。トールと女巨人ヤールンサクサの子で、兄弟モージ(「怒り」)とともにラグナロクを生き延び、父の槌ミョルニルを受け継ぐとされる。ルドルフ・シメクは、この二人とトールの娘スルーズ(「力」)が、父の性質をそれぞれ体現していると述べる。
神話・物語
『詩語法』第17章。トールが石の巨人フルングニルを討ったとき、倒れた巨人の脚がトールの首の上に乗り、動かせなくなった。従者シャールヴィが持ち上げようとしたが力が足りない。トールが倒れたと聞いて駆けつけたアース神族も、誰一人動かせなかった。
そこへマグニが来る。原典は þrívetr——「三冬」、すなわち三歳——と記す。ブロドゥールの英訳(1916年)がこれを「生後三夜」と訳して以来その形も広く流布しているが、古ノルド語の語形が指すのは年齢である。いずれにせよ、幼子であることに変わりはない。彼は脚を投げのけ、こう言った——遅れて来てしまって申し訳ない、この巨人に出会っていたなら拳で打ち殺していたでしょうに。トールは起き上がって息子を迎え、大した者になるだろうと言い、褒美にフルングニルの馬グルファクシを与えた。するとオーディンが口を挟む。良い馬を女巨人の子にやるのは間違っている、父である自分に寄越すべきだ、と。
ジョン・リンドウは、この神とヴァーリを並べて論じる。どちらも母が女巨人であり、どちらも生まれてすぐに、神々の誰にもできない仕事を果たす。ヴァーリは生後一夜でヘズを討ってバルドルの仇を取った。出自の低い側から来た子が、居並ぶ神々を出し抜くという型である。
『ヴァフスルーズニルの言葉』第51節は、スルトの炎が鎮まったのち、モージとマグニがミョルニルを受け継ぎ、ヴィーザルとヴァーリが神々の聖域に住むと告げる。トールの名を継ぐ者は現れない。槌だけが残る。
図像と象徴
この神を描いた図像は知られておらず、本サイトも主画像を掲げない。フルングニルの決闘を扱った近代の挿絵にも、脚を持ち上げる幼子はほとんど描かれない。画家が選ぶのは決闘そのものであって、その後始末ではないためである。
名がそのまま属性であるという点で、モージ・マグニ・スルーズの三人は北欧神話でも特異な組をなす。「怒り」「力」「力」——いずれも雷神を形容する語であり、独立した人格というより、父の性質を切り出して名づけたもののように見える。スカルド詩がトールを「モージの父」「マグニの父」と呼ぶのも、この性格に合う。
物語のなかでこの神が示す力は、武器を用いない。素手で巨人の脚を投げのける。父が槌によって示すものを、息子は身体だけで示している。
系譜と関係
父はトール、母はヤールンサクサ。『詩語法』第17章はマグニをヤールンサクサの子と明記する一方、モージの母は記していない。同じ女巨人とする読みもあるが、確証はない。異母の姉妹にスルーズがいる。
母方が巨人であることは、この神の位置を決めている。オーディンが馬の譲渡に異を唱えたのも、その一点による。神々の側から見れば、トールの子は半分は敵の血を引いている。それでも世界の終わりを越えて槌を継ぐのはこの兄弟であり、血統への疑義は結末では覆されている。
文化的足跡
ラグナロクを生き延びる少数の一柱として、この神は「終わりのあとの世界」を語る場面に必ず名を連ねる。新しい世界に戻ってくる者の顔ぶれ——ヴィーザル、ヴァーリ、モージとマグニ、そして甦るバルドルとヘズ——は、いずれも主役ではない神々である。北欧神話の終末は、二番手たちに引き継がれる。
現代の翻案では、トールの子という一点で登場することが多い。原典が与えた場面は一つだけだが、その一つが「父を助ける」ことであるのは、この神の名にふさわしい。