テオニム THEONYM · 世界神話アーカイブ 神格を検索
PLATE — JÁRNSAXA
NORÐR · 北欧神話
JÁRNSAXA

ヤールンサクサ

ヤルンサクサ · ヤールンサクサ · イアーンサクサ

北欧神話の女巨人。トールとのあいだにマグニを産んだとされ、ヘイムダルの九人の母の一人にも数えられる。

01

解説

概要

ヤールンサクサ(Járnsaxa)は、北欧神話の女巨人である。スノッリ・ストゥルルソンの『散文のエッダ』は、彼女をトールの情人、その子マグニの母として記す。

名は járn(鉄)と sax から成る。sax は古英語の seax に対応し、短剣あるいは大振りの刃物を指す語である。「鉄の短剣」「鉄の刃を持つ女」「鉄剣で武装した者」などと訳されてきた。

登場する物語

まとまった物語はない。三つの断片的な言及が伝わるだけである。

『短い巫女の予言』は、彼女をヘイムダルの九人の母の一人として名を挙げる。九人の女から生まれるというこの神の異様な出自を語る一節で、母たちの名が列挙されるなかに彼女が含まれている。

『詩語法』には、エリヤ・ヤールンサクス(elja Járnsǫxu、「ヤールンサクサの競争相手」あるいは「ヤールンサクサと男を分かち合う者」)という句が、トールの妻シヴを指す言い方の一つとして挙げられている。二人の女の関係が直接語られることはないが、ケニングがそれを前提として成り立っている。神話の細部が、物語ではなく詩の語法のなかにだけ残っている例である。

三つ目は、トールと巨人フルングニルの決闘の物語である。スノッリはここでマグニをトールとヤールンサクサの子と呼ぶ。三歳のマグニは、倒れたフルングニルの脚に組み敷かれて動けぬ父を、ただ一人で助け出した。トールは礼として、巨人の名馬グッルファクシをこの子に与える。しかし『ハールバルズの歌』でオーディンは、女巨人の子ではなく父である自分にこそ馬を贈るべきだったと言い、トールの振る舞いを咎めた。

トールのもう一人の息子モージの母が彼女なのかどうかは、どこにも記されていない。

図像と象徴

図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。姿の描写も、住処も、最期も語られない。

この存在について確かなのは、名と血筋だけである。しかしその血筋には意味がある。マグニはラグナロクを生き延び、弟モージとともに父の鎚ミョルニルを継ぐとされる数少ない神の一人である。世界が焼かれたのちに残るのは、アース神族と巨人の血を併せ持つ者たちだということになる。北欧神話における神々と巨人の敵対が、婚姻と出生によって繰り返し裏切られていることを、この名は端的に示している。

関わる神格・伝承

情人はトール、子はマグニ。ヘイムダルの九人の母の一人でもあるが、この二つの系譜がどう結びつくのかは資料が語らない。九人の母たちの多くは同様に名だけが残る存在であり、彼女もその一人である。

シヴとは、詩の語法のうえで「男を分かち合う者」として対置される。トールの正妻と女巨人の情人という配置は、オーディンニョルズの周辺にも見られる型である。

文化的足跡

ヤールンサクサの名が単独で語られることはほとんどない。マグニの母として、あるいはヘイムダルの母の一覧のなかで挙げられるのが常である。

土星の不規則衛星の一つに、この名が付けられている。北欧神話の巨人の名を冠する一群の衛星のうちの一つである。

02

領分・別名

03

資料

Wikidata
Q609844 — 骨格データの出典