マク・クル
マク・クイル · エートゥル · Mac Cuill
ダグザの孫でトゥアハ・デ・ダナーン最後の三王の一人。名は榛の神コルに由来する。兄弟とともにルーを殺し、一年交替で王権を担った。妻はバンバ。ミレー族との戦いで討たれた。
解説
概要
マク・クル(Mac Cuill)は、アイルランド神話のトゥアハ・デ・ダナーンの一人である。ダグザの子ケルマイトの子にあたる。
本来の名はエートゥルで、自らの神である榛(はしばみ)のコルにちなんでマク・クル(「榛の子」)と呼ばれた。妻はバンバである。
神話・物語
兄弟マク・ケーフト、マク・グレーネとともに、父の仇としてルーを殺した。ケルマイトはルーの妻と通じたためにルーに殺されており、その子らが報復したのである。
三兄弟はアイルランドの共同の上王となり、一年ごとに交替で王権を担った。資料によって二十九年あるいは三十年におよぶ。ミレー族の到来以前の、トゥアハ・デ・ダナーンの最後の王たちである。
三兄弟はスペインから来たイースを謀殺した。イースはアイルランドの豊かさを讃えたために、これを狙っていると疑われたのである。この殺害が、甥ミール・エスパーニェとその子らによるアイルランド侵攻を招いた。
ミレー族との戦いにおいて、マク・クルはエーベル・フィンに討たれた。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
三兄弟の名は、それぞれの神に由来する。榛、犂、太陽。植物、農具、天体という三種の対象が、三人の王の名になっている。榛の木はアイルランドにおいて知恵と結びつく樹木であり、オガム文字のコルの字母でもある。
三人で一年交替という王権の形も特徴的である。単独の王ではなく、三人が順に治める。アイルランドの三分割の観念——三女神、三王——が、王権の形にも及んでいる。
系譜と関係
父はケルマイト、祖父はダグザ。兄弟はマク・ケーフトとマク・グレーネ。妻はバンバ。討ち手はエーベル・フィン。
三兄弟の妻がそれぞれバンバ、フォドラ、エリウ——アイルランドの名祖である三女神——であることが、この王たちの位置を決めている。土地の女神を妻とする者が王であるという、ケルトの王権観念の表現である。
文化的足跡
日本語圏では、トゥアハ・デ・ダナーンの最後の王たちとして、三兄弟がまとめて言及される程度である。個別の名まで挙げられることは少ない。