エリウ
エール · エリン · エーリウ
アイルランドの名祖にして守護女神。ミレー族の詩人アメルギンに自分の名を国に与えるよう求め、約束を得た。夫はマク・グレーネ。アイルランド共和国の国名エールはこの名に由来する。
解説
概要
エリウ(古アイルランド語 Ériu、現代語 Éire)は、アイルランド神話のトゥアハ・デ・ダナーンの女神で、デルバイスとエルンマスの娘である。アイルランドの名祖にして守護女神にあたる。
英語のアイルランド(Ireland)は、エリウの名にゲルマン語の「土地」を付したものである。
神話・物語
『アイルランド来寇の書』によれば、ミレー族がスペインから来たとき、三姉妹——バンバ、フォドラ、エリウ——がそれぞれ詩人アメルギンに、自分の名を国に与えるよう求めた。
エリウはウシュネホの丘でミレー族を迎え、彼らがこの地に永遠に住むと予言し、自分の名を国に与えることを求めた。アメルギンはこれを約束する。ただしミレー族の一人ドンはこれを侮り、エリウはドンがこの地を得ることはないと予言した。ドンは船が沈んで溺れ、その名は南西の沖の島に残る。
エリウが論争に勝ったとみられるが、詩人たちは三人すべての願いが叶えられたとし、フォドラとバンバもアイルランドの文学的な名として用いられる。
夫はマク・グレーネ——「太陽の子」——であり、トゥアハ・デ・ダナーン最後の三王の一人である。
『バンシェンハス』(中世の女性列伝)は、三姉妹を「トゥアハ・デ・ダナンの美しき女たち」と呼ぶ。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
名の語源は、古アイルランド語 *Īweriū に遡り、民族名イウェルニと関係する。ケルト祖語 *Φīwerjon-、さらに印欧祖語 *piHwerjon-(「肥沃な土地」「豊かな土地」)に由来し、ギリシア語のピーエイラ、サンスクリットのピーヴァラ(「肥えた、満ちた」)と同源である。この古い形はギリシア語にイエルネー、ラテン語にヒベルニアとして借用された。
土地そのものが女神であり、その名が国名になる——ケルトの土地の女神(ソヴランティ)の観念の最も明瞭な例である。王は土地の女神と結婚することによって王となる。
系譜と関係
父はデルバイス、母はエルンマス。姉妹はバンバとフォドラ。夫はマク・グレーネ。
エルンマスの娘としては、バズヴ、マッハ、モリガンの三女神も挙げられる。三姉妹が二組——土地の三女神と戦の三女神——同じ母から生まれている。
文化的足跡
アイルランド共和国の憲法上の国名はエール(Éire)であり、この女神の名がそのまま国名である。硬貨、切手、公文書に用いられる。
「エリン」(Erin)はその与格形に由来する詩的な呼称で、アイルランド民族主義の文脈で「エリン・ゴー・ブラー」(アイルランドよ永遠に)などの句に現れる。
神話上の女神の名が、今日の国家の正式名称になっている例として、世界でも数少ない。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。