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緊那羅
PLATE — किंनर
DHARMA · 仏教の尊格
किंनर

緊那羅

キンナラ · キンナリー · 緊捺羅

『Japanese temples and their treasures』審美書院、1910年/興福寺蔵 国宝・八部衆立像のうち緊那羅(奈良時代・乾漆造) PUBLIC DOMAIN

インド神話に現れる天の楽人。半人半獣の姿で妙なる歌を奏でるとされ、仏教では八部衆の一つに数えられた。東南アジアでは半人半鳥の美女キンナリーとして愛されている。

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解説

概要

緊那羅(किंनर / Kiṃnara)は、インド神話に現れる音楽の神霊である。神とも人とも獣とも鳥ともつかない半身半獣の姿から、漢訳では人非人、疑神、歌神、楽神と訳された。仏教に取り込まれて護法善神となり、八部衆の一つに数えられる。女性形はキンナリーと呼ばれ、東南アジアでは半人半鳥の美女として、男性形以上に愛好されてきた。同じ存在が、伝わった土地ごとに違う体を与えられている点が、この神霊のいちばんの見どころである。

登場する物語

マハーバーラタ』のアーディ・パルヴァで、緊那羅は自らをこう語る——われらは永遠の恋人であり、決して離れることがない。永遠に夫婦であって、親になることはない。膝に子はなく、抱き合ったまま尽きることのない歓びのうちに生きている、と。番いで暮らす者という性格が、早くから定まっている。

ジャータカ』には緊那羅を主題とする話がいくつも収められている。第485話は彼らがヒマラヤの諸山に住むと伝え、第540話は森へ去った人間の親に代わって赤子を養う緊那羅を描く。他方、第481話では、鳥のように跳ね、笛を吹き、太鼓を打つ無害な生きものとして捕らえられ、籠に入れて王への献上物にされる。第504話は緊那羅自身の告白という形をとり、狩人からは物の怪と呼ばれ、人からは獣と見なされる境遇を語る。半人半獣という身体が、そのまま所属の定まらなさとして語られている。

仏教で最もよく知られるのは『大樹緊那羅王所問経』の一場面である。香山の大樹緊那羅王が釈迦の前で八万四千の楽を奏でると、頭陀第一と称された摩訶迦葉までが本来の威儀を忘れ、思わず立ち上がって踊りだしたという。音楽が聖者の自制を破るという趣向で、この場面は後世まで繰り返し語られた。

図像と象徴

緊那羅の姿は、伝わった土地ごとに大きく違う。インドから中国・日本に至る系統では馬頭人身とされ、注釈書『玄応音義』は「頭を馬頭につくる」と説き、『慧琳音義』は男は馬首人身でよく歌い、女は端正でよく舞うと記す。古い形式の胎蔵曼荼羅にも、馬頭人身で鼓と鈸を打つ姿が描かれている。ただし現在通行する曼荼羅では、同じ図像に鳩槃荼の尊名が宛てられており、後世の取り違えがそのまま残っている。

東南アジアでは一転して半人半鳥である。上半身は人、翼と尾と脚は白鳥で、タイのキンナリーは天女の装束をまとった若い女性として表される。バンコクのワット・プラケオを飾る金色のキンナリー像はその代表例である。ジャワのボロブドゥールやムンドゥット、プランバナンの浮彫にも、人頭鳥身、あるいは鳥の下半身をもつ人として現れ、生命の樹カルパタルを守る番いの姿で刻まれている。カンボジアではケノーレイの名で宮廷舞踊の役柄にもなった。

日本の作例では、興福寺西金堂の八部衆立像のうちの緊那羅像(奈良時代・国宝、乾漆造)が名高い。額の上に一角を戴き、甲を着けた童子形に表される。馬頭人身という原義からはすでに離れており、経典の記述と造形とがどこで食い違ったのかは、なお定説を見ない。

なお、極楽浄土の鳥である迦陵頻伽も人頭鳥身に表されるため、東アジアの美術ではしばしば混同されるが、両者は由来を異にする別の存在である。

関係する神格

夜叉とともにブラフマーのつま先から生まれたとされ、カイラス山にあるクベーラの天界で、乾闥婆とともに楽師をつとめる。仏教では乾闥婆と同じく帝釈天の眷属に数えられ、密教では胎蔵曼荼羅の外金剛部院の北方に配される。

文化的足跡

中国では少林寺の護法神として独自の展開を見せた。『河南府志』の伝えるところでは、元代、寺の炊事場で雑務を務める行者がいた。紅巾軍が寺を襲ったとき、彼は突然数十丈の巨躯となり、みずから緊那羅王と名乗って賊を追い払った。僧たちは行者を緊那羅王の化身と知り、塑像を造って緊那羅殿を建てたという。今も伽藍菩薩として祀られ、少林の武術と結びつけて語られる。

タイでは、マノーラー(マノハラー)という名のキンナリーの物語が広く知られる。15世紀頃にチエンマイの僧が編んだとされる『パンニャーサ・ジャータカ』の一話で、王子スダナとの恋を描く。南タイの舞踊劇マノーラーはこの物語に由来し、鳥の翼を模した装束をまとって舞う。ミャンマーの映画賞の像がキンナリーであるように、東南アジアでは今も身近な図像でありつづけている。

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領分・別名

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資料

Wikidata
Q1425311 — 骨格データの出典
Commons
Kinnara — 図像カテゴリ