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乾闥婆
PLATE — गन्धर्व
DHARMA · 仏教の尊格
गन्धर्व

乾闥婆

ガンダルヴァ · 乾闥婆王 · 健達縛

『Japanese temples and their treasures』審美書院、1910年/興福寺蔵 国宝・八部衆立像のうち乾闥婆(奈良時代・乾漆造) PUBLIC DOMAIN

インド神話の天の楽人。神々の宴で楽を奏し、天女アプサラスと対をなす。香を食物とするとされ、仏教では八部衆の一つ乾闥婆として帝釈天に仕える。

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解説

概要

乾闥婆(गन्धर्व / Gandharva)は、インドに発する天の楽人である。ガンダルヴァと音写され、男性は楽を奏して歌い、女性(ガンダルヴィー)は舞うとされる。香を食物とするという伝えから、漢訳では尋香、食香、香陰とも訳された。仏教に取り込まれて八部衆の一つに数えられ、日本では乾闥婆(けんだつば)の名で知られる。同じく音楽を司る緊那羅としばしば並び称されるが、緊那羅が半人半獣であるのに対し、乾闥婆は人の姿で表されるのが通例である。

登場する物語

ヴェーダの乾闥婆は、まだ楽人ではない。『リグ・ヴェーダ』では単数形の一神格として現れ、太陽の近く、あるいは天上の水に住んで、神々と祭主のために聖なる飲料ソーマを見張る者とされる。太陽の娘からソーマを受け取ってソーマ草に納める、すなわち天上のものを地上へ運ぶ働きが説かれ、人や馬を彼方から連れてくるとも語られる。境界を越えて物を運び、その危うさを取り除いてこの世に渡す——これが最古層の乾闥婆の職能である。後代には豊穣と生殖の力とも結びついた。

『アタルヴァ・ヴェーダ』は乾闥婆を六千三百三十三と数える。ここではすでに群としての存在であり、天女アプサラスの夫たちとされ、香り高い衣をまとった美しい者として描かれる。インドラの天界に住んでその宮廷に仕える一方、みずからの世界ガンダルヴァローカも与えられた。ヒンドゥー法では、儀礼を経ずに当人どうしの合意だけで成立する婚姻を「ガンダルヴァ婚」と呼ぶ。恋の神霊という性格が、法制上の用語にまでなっている。

マハーバーラタ』では、歌舞の担い手としてだけでなく、夜叉と並ぶ手強い戦士としても現れる。トゥンブル、ヴィシュヴァーヴァス、チトラセーナら、個々の名も伝えられる。

仏教では位置づけが下がり、四大王衆天に属して東方を守る持国天に従う低位の天とされた。樹木や花と結びつけられ、樹皮や樹液や花の香りのうちに住むという。パーリ経典には、乾闥婆パンチャシカが恋するスーリヤヴァッチャサーを想って琵琶を奏し、その調べに釈迦と阿羅漢への讃嘆を織り込んだところ、帝釈天のとりなしで婚姻がかなったという物語が伝わる。音楽が仲立ちになるという趣向は、この一群の性格をよく表している。

なお仏教には、乾闥婆をもう一つの意味で用いる用法がある。『中部経典』は母胎に生命が宿るには三つの条件が要るとし、その一つに「ガンダッバの現前」を挙げる。註釈はこれを天の楽人ではなく、業に導かれて生を受けようとする者、すなわち死と再生のあいだにある存在と解する。同じ語が、天の楽人と中有の存在という二つの意味を担っている。

図像と象徴

インドの図像では、乾闥婆は美しい人の姿で、多くは楽器を携えて表される。ヴィーナー(弦楽器)を奏でる姿が代表的で、アプサラスと対をなして寺院の壁面や天蓋の周囲を飾る。一部には鳥や馬の要素をあわせもつ姿も説かれるが、緊那羅ほど徹底した半人半獣にはならない。

日本の作例で名高いのは、興福寺西金堂の八部衆立像のうちの乾闥婆立像(奈良時代・国宝、乾漆造)である。獅子の冠を戴き、甲を着けて合掌する少年の姿に表される。同じ八部衆の阿修羅像ほど知られてはいないが、抑えた表情の造形は同系の作としてしばしば並べて論じられる。密教の胎蔵曼荼羅では外金剛部院に配される。

香を食するという性格は、造形よりも語のうえに残った。香炉や薫物とともにこの尊名が呼ばれるのはそのためである。

関係する神格

帝釈天(インドラ)の眷属で、その天界に住んで楽師をつとめる。アプサラスとは夫婦の関係に置かれる。仏教では緊那羅とともに八部衆に列なり、両者はほぼ常に併記される。出自についてはプラジャーパティの子、ブラフマーの子、カシュヤパとプラダーの子など諸説あり、『バーガヴァタ・プラーナ』はブラフマーの笑いから生じたと伝える。一定しないのは、この一群が個別の神格ではなく類としてまとめられたためである。

文化的足跡

南インドのケーララ州には、乾闥婆を祀る寺院が点在するという珍しい伝統がある。ヤクシー(夜叉女)とともに祀られ、子宝と幸運を願う対象とされる。乾闥婆の怒りに触れると「ガンダルヴァ・ドーシャ」という障りを受け、とりわけ子を得ることに支障が出ると信じられてきた。テイヤムと呼ばれる憑霊儀礼の一種として、乾闥婆を招くガンダルヴァンパットゥも伝えられる。インドにおける乾闥婆信仰そのものが稀であるだけに、この地域の集中は際立っている。

インド古典音楽では、優れた歌い手を指す語としてガンダルヴァの名が用いられ、音楽の学を「ガーンダルヴァ・ヴェーダ」と呼ぶ伝統もある。神霊の名が、そのまま音楽そのものの称になった例である。

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領分・別名

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資料

Wikidata
Q1291498 — 骨格データの出典
Commons
Gandharva — 図像カテゴリ