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ヘカベー
PLATE — ἙΚΆΒΗ
HELLAS · ギリシア神話
ἙΚΆΒΗ

ヘカベー

ヘカベ · ヘクバ · ヘキュバ

ArchaiOptix CC BY-SA 4.0

トロイア王プリアモスの妻。多くの子を戦争で失い、落城後は奴隷とされ、最後は犬に変じたと伝えられる。

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解説

概要

ヘカベー(Ἑκάβη / Hekabē)は、トロイア王プリアモスの妻で、ヘクトールパリスカッサンドラーらの母である。プリュギア王デュマースの娘とされるが、トラーキア王キッセウスの娘とも、河神サンガリオスの娘ともいう。

彼女はギリシア悲劇において、失うことそのものを担う人物として造形された。夫と息子たちを失い、娘を犠牲に取られ、奴隷として連れ去られる。人間としての境遇の底に至った者が最後に復讐を果たし、そして人間でなくなるという筋は、他に例がない。

神話・物語

パリスを産む前、彼女は自分が燃える松明を生み、それが都市を焼き尽くす夢を見た。夢占いに従って子は捨てられたが、生き延びて予言のとおりトロイアを滅ぼす。

イーリアス』では母として現れる。第22巻で城壁から息子に呼びかけ、第24巻ではヘクトールの遺体を前に嘆く。ホメーロスが与えるのは、指図する王妃ではなく止められない母の役である。

落城後の物語はエウリピデスが二作にわたって扱った。『ヘカベー』では、娘ポリュクセネーアキレウスの墓前の犠牲に取られたうえ、トラーキア王ポリュメーストールに預けていた末子ポリュドーロスが殺されていたことを知る。彼女は王を欺いて呼び寄せ、女たちとともにその両眼を潰し、二人の子を殺して復讐を果たした。『トロイアの女』では、勝者に分配される女たちの一人として、オデュッセウスの奴隷になることを告げられる。

最期は伝承ごとに違う。呪いを吐いたために神が犬に変えたとも、狂って犬に変じ海へ身を投げたともいう。ケルソネーソスに葬られた場所はキュノスセーマ(犬の墓)と呼ばれ、船乗りの目印になったと伝えられる。

彼女の名はもともと神名であり、アッティカで祀られた女神ヘカレーのプリュギア語形であったと考えられている。ヘカテーとの関連も指摘され、最後に犬となって海に入るという結末を、ヘカテーの娘ともされるスキュラの反映とみる説もある。悲劇の王妃の背後に女神の層があるという読みである。

図像と象徴

彼女が独立した主題になることは少ない。現れるのは息子の出陣を見送る場面、遺体を嘆く場面、そして落城後に連れ去られる場面である。

本ページの主画像は前510〜500年頃のアッティカ赤絵式アンフォラ(エウテュミデース作)で、武装するヘクトールを老いた父プリアモスと母ヘカベーが左右から見守る場面を、三人の銘つきで描く。母としての彼女を示す作例のなかで最も早いものの一つである。

系譜と関係

父デュマース(異伝ではキッセウス、サンガリオス)、母エウノエー。夫プリアモス。ホメーロスは十九人の子を彼女に帰す。ヘクトール、パリス、デーイポボスヘレノス、ポリュドーロス、カッサンドラー、ポリュクセネーら。

アポローンとの子トローイロスは、二十歳まで生きればトロイアは落ちないと予言されていたが、その前にアキレウスに討たれた。

文化的足跡

シェイクスピア『ハムレット』の劇中劇に登場する「ヘキュバ」への言及——役者が架空の王妃のために涙を流すのを見て主人公が自らを責める場面——は、この人物が近世ヨーロッパにおいて悲嘆の代名詞であったことを示している。

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領分・別名

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資料

Wikidata
Q193433 — 骨格データの出典
Commons
Hecuba — 図像カテゴリ