八仙
はっせん · 八洞神仙
道教で最も親しまれる八人の仙人の一群。李鉄拐・鍾離権・張果老・呂洞賓・何仙姑・藍采和・韓湘子・曹国舅からなり、各自の宝具を手に海を渡る「八仙過海」の説話で知られる。
解説
概要
八仙(はっせん、Bāxiān)は、道教でもっとも親しまれる八人の仙人の一群である。老若・男女・貴賤の別なく、さまざまな出自の者が修行の末に仙となった顔ぶれからなり、「誰もが仙になりうる」という道教の理想を体現する。それぞれが固有の宝具(暗八仙〔あんはっせん〕)をたずさえ、力を合わせて海を渡る「八仙過海(はっせんかかい)」の説話で名高い。
神話・物語
八仙の顔ぶれは、元代の雑劇を経て、明代に定着した。呉元泰の小説『東遊記』が、その物語をまとめた代表的な作品である。八人は、鉄の杖と薬の瓢箪(ひょうたん)をもつ李鉄拐(りてっかい)、羽扇で死者をも蘇らせる鍾離権(しょうりけん)、紙の驢馬(ろば)に逆さまに乗る張果老(ちょうかろう)、妖を斬る剣を負う呂洞賓(りょどうひん)、蓮を手にする紅一点の何仙姑(かせんこ)、花籠をさげる両性的な藍采和(らんさいか)、笛で花を咲かせる韓湘子(かんしょうし)、玉板(ぎょくばん)を打つ曹国舅(そうこくきゅう)である。なかでも呂洞賓は、鍾離権に導かれて道を得た人物として、八仙第一の人気を誇る。
八仙は、しばしば西王母が催す蟠桃会に招かれる。その帰途、海を渡るにあたって舟を用いず、めいめいが宝具を波に投じてその上に乗り、あるいは神通を競ったという「八仙過海、各々(おのおの)神通を顕(あらわ)す」の一段は、力を合わせつつも各自の個性で難を越える故事として、ことわざにもなった。
図像と象徴
八仙は、八人そろって、あるいは海を渡る群像として描かれる。それぞれの宝具——瓢箪・扇・魚鼓(ぎょこ)・剣・蓮・花籠・笛・玉板——は、八仙その人を離れて「暗八仙」の吉祥文様となり、器物や染織を彩った。明の張沖(ちょうちゅう)が絹に描いた『瑤池仙劇図』のように、仙人たちの集う華やかな群像は、道教絵画の好画題であった。
系譜と関係
八仙は特定の一神ではなく、八人の仙人の連なりとして信仰される。西王母の蟠桃会に連なり、仙界の宴を彩る存在として、他の仙・神とゆるやかに結びつく。
文化的足跡
八仙は、寺廟の装飾から芝居、年画、器物の文様にいたるまで、東アジアの生活のあらゆる場面に浸透した。とりわけ長寿を祝う祝寿(しゅくじゅ)の吉祥図として好まれ、今日も演劇・映像・ゲームなどに広く姿をとどめている。