藍采和
らんさいか · 養素 · Lan Caihe
破れた藍色の衣に片足だけ靴を履き、拍板を打って踏歌を歌い歩いた八仙の一人。その歌には仙道の教えが込められていたが誰も気づかなかった。酒楼で鶴に乗って昇天した。性別も年齢も定まらず、暗八仙は花籠。
解説
概要
藍采和(らんさいか、Lán Cǎihé)は、中国の道教で信仰される八仙の一人である。唐代の人とされ、拍子木を打ち鳴らして歌い歩く奇矯な放浪者として語られる。後世の絵画では少年とも女性とも描かれ、八仙のなかで最も姿が一定しない。
神話・物語
最も古い記録は、10世紀の南唐の沈汾『続仙伝』である。それによれば、藍采和は破れた藍色の衣を着て、幅三寸ほどの黒い木の帯を締め、片足にだけ靴を履いて、もう片方は裸足で歩いた。夏には綿入れを重ね着しても汗をかかず、冬には単衣で雪のなかに寝ても体から湯気が立ったという。
町では三尺あまりの大きな拍板を打ちながら、即興の歌をうたって物乞いをし、酔うと踊った。歌は「踏踏歌、藍采和、世界能く幾何ぞ。紅顔は一春の樹、流年は一擲の梭」のように、人の世の短さを歌うもので、思いつきの戯れ歌に聞こえて仙道の教えを含んでいた。施された銭は縄に通して引きずって歩き、落ちても気にかけず、貧しい人に分け与えたり酒に換えたりした。
ある日、濠梁の酒楼で酔って歌っていると、雲のあいだから笙の音と鶴の鳴き声が聞こえた。藍采和は靴や衣、帯、拍板を脱ぎ捨てて鶴に乗り、空へ昇っていった。
図像と象徴
花を盛った籠を持ち、あるいは担ぐ姿で描かれる。八仙の持物だけで八仙を表す「暗八仙」の図案では、花籠が藍采和を示す。拍板を手にした姿もある。本サイトの主画像は、藍采和を描いた古い木版画である。
系譜と関係
八仙の一。元代の雑劇では、鍾離権に導かれて仙道に入る者として描かれる。
文化的足跡
元代の雑劇『漢鍾離度脱藍采和』は、「藍采和」を芸名とする役者許堅が鍾離権に導かれて俗世を離れる話で、旅回りの一座の暮らしや芝居の仕組みを伝える資料としても注目されている。
なお道教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。