鍾離権
しょうりけん · 漢鍾離 · 雲房先生
八仙の筆頭で最年長の仙人。もと漢の官、のち西晋の将軍だったが敗れて終南山に逃れ、東華帝君から仙術を授かった。呂洞賓の師で「鍾呂」と併称される。あげまきを結い腹を出した姿で、暗八仙は芭蕉扇。
解説
概要
鍾離権(しょうりけん、Zhōnglí Quán)は、中国の道教で信仰される八仙の一人で、その筆頭に数えられることが多い。号は雲房先生、正陽真人とも呼ばれ、「漢鍾離」の通称でも知られる。呂洞賓の師とされ、二人は「鍾呂」と並び称される。
神話・物語
後世の伝記によれば、鍾離権は漢に仕えて高官となり、のちに将軍として戦ったが敗れ、終南山に逃れて道に迷った。そこで東華帝君(あるいは名のない老人)に出会って仙道の秘訣を授けられ、仙人となったという。「漢鍾離」の呼び名を「漢の人鍾離」と解するのはこの伝えによる。一方、宋代の記録には、鍾離権が自らを「天下都散漢」(天下一の暇人)と称したとするものがあり、この「散漢」の「漢」が王朝名と取り違えられたとみる説もある。実在の人物としては唐末から五代頃の道士とみる見方が多い。
鍾離権の名は、内丹(体内で気を練って不老を得る修行)の伝承と深く結びつく。宋代にまとめられた『鍾呂伝道集』は、鍾離権が呂洞賓に問答の形で内丹の道を説く書で、内丹術の基本文献の一つとされる。金代に起こった全真教は、東華帝君に続く祖師として鍾離権と呂洞賓を数え、北五祖の一人とした。
元代の雑劇では、鍾離権は人を俗世から救い出して仙道へ導く役で登場する。『漢鍾離度脱藍采和』では、役者の許堅を導いて仙人藍采和とする。
図像と象徴
頭の両側に髷を結い、胸と腹をはだけた大柄な姿で描かれ、手には芭蕉の葉の扇を持つ。八仙それぞれの持物だけで八仙を表す「暗八仙」の図案では、扇が鍾離権を示す。この扇には死者をよみがえらせる力があると説かれる。本サイトの主画像は、鍾離権を描いた図である。
系譜と関係
八仙の一。師は東華帝君、弟子は呂洞賓。全真教の北五祖の一人。
文化的足跡
暗八仙の図案は、陶磁器や刺繍、建築の装飾に吉祥の文様として広く用いられ、芭蕉扇はその一つとして鍾離権を表す。
なお道教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。