ドーリス
ドリス
オーケアノスとテーテュースの娘であるオーケアニスの一人。海神ネーレウスの妻となり、ネーレーイデスと呼ばれる海の女神たちを生んだ。
解説
概要
ドーリス(Δωρίς / Doris)は、オーケアノスとテーテュースの娘たち――オーケアニス――の一人である。海神ネーレウスの妻となり、ネーレーイスと呼ばれる海の女神たちの母となった。名は「贈り物」を意味する語(dōron)に結びつけられ、海が人にもたらす恵みを含むと解されてきたが、確かな語源とは言いがたい。
神話・物語
固有の物語をほとんど持たない。この女神の役割は、二つの水の系譜を接続することにある。大洋オーケアノスの側から出た娘が、海から生じたネーレウスと結ばれることで、ギリシアの水の神々は一本の家系につながる。アムピトリーテー、テティス、ガラテイア、プサマテーはいずれもその娘であり、以後の英雄伝説の多くがここから枝分かれしていく。娘たちのなかに同名のドーリスがいるとも伝えられ、母娘の名が重なる例となっている。
なお、ネーレーイデスの一人としてのドーリスも別に数えられており、オーケアニスのドーリスと混同されやすい。ja.wikipedia がこの二者を一つの記事にまとめているのもそのためである。
図像と象徴
単独で表された古代の作例はほとんどない。ペルガモンの大祭壇の巨人戦争浮彫には銘によってドーリスと確認できる一体があり、夫ネーレウスの近くに配されている。ヘレニズム期の彫刻家が、海の一族を家族として並べて構成したことがうかがえる。本項では主画像を置いていない。
系譜と関係
父オーケアノス、母テーテュース。夫ネーレウス。娘たちがネーレーイデス。オーケアニデスのなかでは、ステュクス(冥河)やメーティスと同様、他の系譜の起点となる女神の一人にあたる。三千人と数えられるオーケアニデスの大半が名だけの存在であるのに対し、ドーリスは家系の結節点として機能している。
文化的足跡
ギリシアの一部族名ドーリス人(ドーリア人)との関係は語形の類似にとどまり、系統的なつながりは認められない。小惑星帯の第48番小惑星にこの名が与えられている。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。