クリュメノス
クリュメノス · Clymenus · Klúmenos
ギリシア神話に現れる複数の人物の名で、冥界の神ハーデースの婉曲的な添え名でもある。名は「名高い」と「悪名高い」の双方を意味する。
解説
概要
クリュメノス(Κλύμενος、「名高い」あるいは「悪名高い」)は、ギリシア神話に現れる複数の人物の名である。
冥界の神ハーデースの婉曲的な添え名としても用いられた。
同名の人物たち
ポローネウスの子。 ケルドー、テレディケー、あるいはキンナとのあいだの子。姉妹クトニアーとともにデーメーテールの聖域を創建した。
ヘーリオスの子でボイオーティアの王。 異伝の系譜では、オーケアニスのメロペーの子らの父とされる。通常はヘーリオスとクリュメネーの子とされる子ら——パエトーンとヘーリアデス——である。ヒュギーヌスの版に見える「クリュメノス」と「メロペー」という名は、オーケアニスのクリュメネーと人間の夫メロプスの名が偶然入れ替わった結果かもしれない。
オルコメノスの王。 ミニュアースの子孫で、テーバイ人に殺された。子エルギーノスがその仇を討ってテーバイに貢納を課したが、のちにヘーラクレースがこれを打ち破る。
カリュドーンの王子。 オイネウスとアルタイアーの子で、メレアグロス、トクセウス、ペリパース、アゲラーオス、デーイアネイラらの兄弟にあたる。
このほか、ペルセウスとピーネウスの争いでホディーテースを殺した者、アルカディアの王でハルパリュケーの父とされる者などが知られる。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
名が「名高い」を意味すると同時に「悪名高い」をも意味する点が、この語の性格を示す。クリュオー(聞く)に由来し、「聞こえた者」——つまり評判の対象——を指す。良い評判とも悪い評判ともつかない。
ハーデースの添え名として用いられるのは、冥界の神の名を直接呼ぶことを避けるためである。プルートーン(富める者)と同じく、婉曲によって恐ろしい神を指す慣行に属する。名を呼ばないことが、その神への恐れを示している。
関わる神格・伝承
ハーデースの婉曲名としては、ハーデースの項に譲る。カリュドーンの王子としては、カリュドーンの猪狩りの物語群に属する。
同名の人物が複数いる例については、アイグレー、クレオパトラー、ガラテイアなどと同じ事情である。
文化的足跡
日本語圏でこの名が挙げられることはまずない。
しかし冥界の神を婉曲的に呼ぶという慣行は、ギリシア宗教の性格を示す重要な事実である。恐ろしいものの名を避けて別の語で呼ぶことは、各地の文化に見られるが、ギリシアの場合その婉曲名がそのまま別の人物の名としても流通している。