ヘーリアデス
ヘリアデス · パエトーンティデス · Heliades
ヘーリオスとクリュメネーの娘たち。兄弟パエトーンの墜死を嘆き続けて白楊に変じ、その涙が琥珀になった。人数と名は資料によって異なる。
解説
概要
ヘーリアデス(Ἡλιάδες、「太陽の娘たち」)は、ギリシア神話でヘーリオスとオーケアニスのクリュメネーの娘たちである。
パエトーンティデス(「パエトーンの娘たち」)とも呼ばれる。パエトーンがヘーリオスの一般的な添え名であるためである。
神話・物語
人数と名は資料によって異なる。ヒュギーヌスが記録する一つの版では七人で、メロペー、ヘリエー、アイグレー、ランペティエー、ポイベー、アイテリエー、ディオクシッペーである。アイスキュロスの断片『ヘーリアデス』はパエトゥーサとランペティエーの名を挙げるが、この二人は別の伝えではネアイラの娘とされ、父の羊と牛の世話をするという別の役を担う。『オデュッセイア』の古注は、パエトゥーサ、ランペティエー、アイグレーの三人とする。
兄弟パエトーンは、父の車——太陽——を御して空を渡ろうとして死んだ。馬を制御できず、多くの伝えでは大地が焼けるのを防ぐためにゼウスが雷霆で車を撃ち、墜落したという。
ヘーリアデスは激しく嘆き、その悲しみによって白楊(ポプラ)に変じた。泣き続ける彼女たちの涙は琥珀になった。一部の資料によれば、その涙——琥珀——はエーリダノス川に落ちたとされる。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、サンティ・ディ・ティートの絵画である。近世の作例であり、古代の図像ではない。
象徴の中心は琥珀である。姉妹の涙が琥珀になるという設定は、琥珀の産地の説明として機能した。エーリダノス川はポー川と同定されることが多く、北方から地中海へ運ばれた琥珀の交易路と結びつけられる。神話が地理と交易の知識を組み込んでいる例である。
白楊への変身も見逃せない。ギリシアの変身譚において、嘆き続ける女は樹木になる。ダプネーが追われて変わるのに対し、ここでは悲しみそのものが変身の原因である。
関わる神格・伝承
父はヘーリオス、母はクリュメネー、兄弟はパエトーン。
パエトゥーサとランペティエーの二人は、『オデュッセイア』第12巻でヘーリオスの牛の番をするニュンペーとしても現れる。オデュッセウスの部下がこの牛を殺したことが、ヘーリオスの怒りを招く。同じ名の姉妹が、パエトーンの物語と『オデュッセイア』の双方に配されている。
文化的足跡
琥珀を「太陽の娘たちの涙」と呼ぶ表現は、ローマの著述家を経てヨーロッパに伝わった。プリニウス『博物誌』もこの伝えに触れている。
日本語圏では、パエトーンの墜落は比較的よく知られるが、その姉妹が琥珀の由来になったことまで語られることは少ない。