ヒュドラー
ヒドラ · ヒュドラ
ギリシア神話の多頭の水蛇の怪物。切るたび首が倍に増え、一つは不死。テューポーンとエキドナの子で、英雄ヘーラクレースが第二の功業として退治した。
解説
概要
ヒュドラー(Ὕδρα / Hydra)は、ギリシア神話に登場する多頭の水蛇の怪物である。アルゴリスのレルナの沼に棲み、切り落とすたびに首が倍に増えるうえ、そのうちの一つは不死であった。英雄ヘーラクレースがその第二の功業として退治したことで知られる。
登場する物語
ヒュドラーは、怪物テューポーンと蛇女エキドナのあいだに生まれたとされ、ヘシオドス『神統記』にその名がみえる。冥界の番犬ケルベロスや、火を吐くキマイラと兄弟の関係にある。ヘーラは、ヘーラクレースを亡き者にせんとしてこの怪物を育てたと伝えられる。
功業に臨んだヘーラクレースは、レルナの沼に潜む怪物を火矢で誘い出し、その首を打ち落としてゆく。ところが一つ斬るごとに二つの首が生えてくるため、彼は甥のイオラーオスに助けを求めた。イオラーオスが切り口をたいまつで焼いて再生を封じ、ついに不死の首を斬り落とすと、それを大岩の下に埋めた。ヘーラが加勢に送った大蟹を踏み潰した挿話も知られる。ヘーラクレースはヒュドラーの猛毒の血に矢を浸し、これがのちに彼自身の命を奪う遠因ともなる。首の数は資料によって異なり、九つとするものが多い。倒された怪物と蟹は、うみへび座と蟹座になったと語られる。
図像と象徴
ヒュドラーは、幾筋もの首をうねらせる蛇として、棍棒や剣をふるうヘーラクレース、たいまつを手にするイオラーオス、足もとの蟹とともに描かれる。この退治の場面は、ヘーラクレースの功業のなかでもとりわけ好んで陶器に表された。本図は前6世紀後半のカエレ式ヒュドリア(水瓶)に描かれた一例である。
関係する神格・退治した英雄
親はテューポーンとエキドナ、兄弟はケルベロスやキマイラら怪物たち。討ち手はヘーラクレースで、伝えによっては女神アテーナーが授けた黄金の鎌(あるいは剣)が不死の首を断ったともいう。甥イオラーオスの助けが勝敗を分けた。
文化的足跡
「ヒュドラの首」は、一つ潰してもいくつも現れる、根絶しがたい問題のたとえとして広く用いられる。再生力をもつ淡水生物ヒドラの名も、この怪物にちなむ。うみへび座として夜空にも刻まれ、現代の創作にもたびたび姿を見せる。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。