キマイラ
キメラ · カイメラ
ギリシア神話の、獅子・山羊・蛇を一体に合わせた火を吐く雌の怪物。テューポーンとエキドナの子とされ、リュキアに棲んだ。英雄ベレロポーンが天馬ペーガソスに乗って討った。アレッツォのキマイラの青銅像で名高い。
解説
概要
キマイラ(Χίμαιρα)は、ギリシア神話に登場する、獅子・山羊・蛇を一体に合わせた火を吐く雌の怪物である。名はギリシア語で「(一歳の)雌山羊」を意味する。小アジア南西のリュキアに棲み、英雄ベレロポーンに討たれた。
神話・物語
ホメーロス『イーリアス』は、キマイラを「前は獅子、後ろは蛇、中ほどは山羊」で、恐ろしい火の力を吐く者と描き、アミソダロスに育てられて多くの人の災いとなったと語る。ヘーシオドス『神統記』は、獅子・山羊・蛇の三つの頭をもつと記す。
リュキア王イオバテスは、ベレロポーンを亡き者にしようとして、キマイラ退治に差し向けた。ベレロポーンは翼ある天馬ペーガソスにまたがり、空から矢を射て怪物を倒したとアポロドーロスは記す。後代のツェツェスなどは、槍の穂先に鉛を仕込んでキマイラの口に突き入れ、炎で溶けた鉛が喉を焼いたと伝える。
ローマ時代の著述家は、リュキアにある、地から絶えず火が噴き出す山キマイラにこの怪物を結びつけた。

図像と象徴
キマイラは、獅子の胴の背から山羊の首が生え、尾が蛇となる姿で表されるのが定型となった。エトルリアの「アレッツォのキマイラ」(前400年頃の青銅像、フィレンツェ国立考古学博物館蔵)は、山羊の首に傷を負って身をよじる姿で名高い。ギリシアや南イタリアの陶画では、ペーガソスに乗るベレロポーンとの戦いの場面が繰り返し描かれた。本サイトが掲げるのは、ルーヴル美術館蔵のアプーリア産の赤絵陶器に描かれたキマイラである。
系譜と関係
ヘーシオドスでは、テューポーンとエキドナの子とされる(『神統記』の該当箇所は、母をヒュドラーとも読める)。兄弟にケルベロス、ヒュドラー、オルトロスがある。討ち手は英雄ベレロポーンで、天馬ペーガソスがこれを支えた。
文化的足跡
異質なものが接ぎ合わされたキマイラの姿は、後世に「複数の要素の混成」を指す語として転用された。生物学では、遺伝的に異なる細胞が一つの個体に共存するものをキメラと呼ぶ。フランス語では、ノートルダム大聖堂などを飾る怪物の彫刻をシメール(キマイラ)と呼ぶ。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。