ブローズグホーヴィ
ブローズホーヴル · ブロージュグホーヴィ · Blóðughófi
フレイの馬。炎と闇のなかを安全に通り抜けることができる。複数のスラ(韻文の名前一覧)にのみ名が現れる。
解説
概要
ブローズグホーヴィ(古ノルド語 Blóðughófi、「血の蹄」)は、北欧神話の豊穣神フレイの馬である。
炎と闇のなかを安全に通り抜けることができるとされる。複数のスラ(þula、韻文の名前一覧)に言及がある。
登場する物語
『カールヴスヴィーサ』は馬の一覧のなかにこの名を挙げ、その乗り手を「ベリを討つ者」——フレイの添え名——と特定する。
『ソルグリームススラ』にも馬の一覧のなかに名が現れる。ここでの乗り手は「力あるアトリジ」とされ、これをフレイの名と解する説がある。ただし近い綴りのアトリジはオーディンの名としても用いられる。
作者不詳のスラの一つでは、ブローズホーヴル(「血の蹄」の異形)の形で馬の一覧に現れる。
エッダ詩『スキールニルの言葉』では、フレイが従者スキールニルに自分の馬を与える。ゲルズへの求婚のためにヨトゥンヘイムへ向かうにあたり、炎を越えて走ることのできる馬である。ただしここでは馬の名は挙げられていない。
図像と象徴
図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
炎を越えるという能力が、この馬を規定する。ゲルズへの求婚は炎の壁を越えることを要し、その手立てとしてこの馬が与えられた。障壁を越える乗物という機能である。
フレイと馬の結びつきは、他の文献にも見られる。『フラフンケルのサガ』『ヴァトンスダーラのサガ』『オーラーヴ・トリュッグヴァソンのサガ』には、この神に献じられた馬が現れる。ただしこれらの資料は成立が遅く、この点について信頼できるとは限らないと指摘されている。
関わる神格・伝承
主はフレイ。名を持つ北欧の馬としては、オーディンのスレイプニル、シグルズのグラニ、フルングニルのグルファクシ、ダグとノートのスキンファクシとフリームファクシが知られる。
フレイは猪グリンブルスティと船スキーズブラズニルも持つ。乗物を三つ備える神は、北欧神話において例が少ない。
文化的足跡
ゲルズル・クリストニーの詩集『ブローズホーヴニル』(2010年)は、ゲルズとフレイ、そしてスキールニルの神話を語り直した作品で、この馬の名を題に採っている。
日本語圏では、フレイの乗物といえば猪グリンブルスティと船スキーズブラズニルが知られ、馬の名が挙げられることはまずない。名前の一覧にしか現れない存在が、それでも名を残しているという点で、スラという韻文形式の役割を示す例である。