スキールニル
スキルニル · Skírnir · Skirnir
フレイの使者で、巨人の娘ゲルズへの求婚のためヨトゥンヘイムへ赴き、ルーンの呪いで脅して承諾させた。報酬としてフレイの剣を得たため、フレイはラグナロクで剣を持たずスルトに敗れる。
解説
概要
北欧神話において、スキールニル(Skírnir、「輝く者」)は、神フレイの使者にして従者である。『古エッダ』と『スノッリのエッダ』の双方に現れる。
神話・物語
エッダ詩『スキールニルの歌』で、スキールニルは使者として巨人の国ヨトゥンヘイムへ遣わされ、恋に悩むフレイにかわって、巨人の娘ゲルズに求婚する。その報いとして、フレイの強い剣を与えられることが条件であった。ゲルズは、黄金の林檎や、オーディンの腕輪ドラウプニルを差し出されても、応じなかった。そこでスキールニルは脅しに転じた。剣で首を刎ねると脅しても動じないゲルズに、ルーン文字による呪いを唱えたのである。あらゆる神に憎まれ、ひとりきりで異界の丘に坐り、三つの頭を持つ巨人に嫁ぎ、山羊の尿を飲むことになる、という長い呪いであった。ゲルズはついに折れ、九夜ののちにバッリの森で会うことを約束した。
フレイは報いとして剣を手放した。そのためラグナロクのとき、フレイは剣を持たず、鹿の角でスルトと戦って敗れることになる。一時の恋が、世界の終わりの戦いでの敗北を招いたのである。
『スノッリのエッダ』では、狼フェンリルを縛るための紐グレイプニルを手に入れるため、オーディンがスキールニルを黒い妖精たちの国へ遣わしている。
解釈
『スキールニルの歌』は、豊穣の神フレイと大地の女ゲルズの結婚を、季節の儀礼の反映とみる解釈がある。ただし詩の内容は求婚というより脅迫であり、この読みには批判もある。
呪いの言葉の長さと具体性から、この詩は実際のルーン呪術の定型を反映するとみられる。ルーン碑文に類似の呪詛が刻まれた例がある。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、フレードリク・サンデル版『エッダ』(1893年)の挿絵に描かれたスキールニルである。
スキールニルは自らの意志で行動するのではなく、主人の恋のために脅迫を行う。しかしその報酬が、主人の破滅の原因になる。
関わる神格・伝承
フレイの従者。ゲルズへの求婚。グレイプニルを取りに行った。
文化的足跡
『スキールニルの歌』は、エッダ詩のなかでも呪詛の言葉の激しさで知られ、古ノルド語の呪術研究の主要な資料である。