スキールニル
スキールニル · スキルニル · Skírnir
フレイの使者で、巨人の娘ゲルズへの求婚のためヨトゥンヘイムへ赴き、ルーンの呪いで脅して承諾させた。報酬としてフレイの剣を得たため、フレイはラグナロクで剣を持たずスルトに敗れる。
解説
概要
北欧神話において、スキールニル(Skírnir、「輝く者」)は、神フレイの使者にして従者である。『古エッダ』と『新エッダ』の双方に現れる。
神話・物語
スキールニルの旅。 エッダ詩『スキールニルの歌』において、スキールニルは使者としてヨトゥンヘイムへ遣わされ、恋煩うフレイのために巨人の娘ゲルズへの求婚を行う。報酬としてフレイの強力な剣を与えられることが条件であった。
ゲルズは黄金の林檎、オーディンの腕輪ドラウプニルを提示されても応じなかった。そこでスキールニルは脅迫に転じる。
剣で首を落とすと脅し、それでも動じない相手に、ルーンによる呪いを唱えた。あらゆる神に憎まれ、独りで異界の丘に坐し、三つ頭の巨人に嫁ぎ、山羊の尿を飲むことになる——という長い呪詛である。
ゲルズは屈し、九夜ののちバッリの森で会うことを約した。
剣の代償。 フレイは報酬として剣を手放した。ラグナロクにおいて、フレイは剣を持たず、鹿の角でスルトと戦って敗れる。一時の恋が、世界の終わりにおける敗北の原因となる。
フェンリルの縛め。 『新エッダ』では、狼フェンリルを縛る紐グレイプニルを取りに、オーディンがスキールニルを黒エルフの国へ遣わした。
解釈
『スキールニルの歌』は、豊穣の神フレイと大地の女ゲルズの結婚を、季節の儀礼の反映とみる解釈がある。ただし詩の内容は求婚というより脅迫であり、この読みには批判もある。
呪いの言葉の長さと具体性から、この詩は実際のルーン呪術の定型を反映するとみられる。ルーン碑文に類似の呪詛が刻まれた例がある。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、スキールニルの図である(エッダの写本挿絵より)。
使者という位置が、この人物を規定する。自らの意志で行動するのではなく、主人の恋のために脅迫を行う。しかしその報酬が、主人の破滅の原因になる。
関わる神格・伝承
フレイの従者。ゲルズへの求婚。グレイプニルを取りに行った。
文化的足跡
『スキールニルの歌』は、エッダ詩のなかでも呪詛の言葉の激しさで知られ、古ノルド語の呪術研究の主要な資料である。