スキンファクシとフリームファクシ
スキンファクシ · フリームファクシ · スキンファクセ
昼の神ダグの馬スキンファクシ(輝く鬣)と、夜の女神ノートの馬フリームファクシ(霜の鬣)。前者の鬣が空と地を照らし、後者の轡から落ちる泡が露になる。
解説
概要
スキンファクシ(古ノルド語 Skinfaxi、「輝く鬣」)とフリームファクシ(Hrímfaxi、「霜の鬣」)は、北欧神話で昼の神ダグと夜の女神ノートの馬である。
スキンファクシは日ごとにダグの車を空へ牽き、その鬣が空と地上を照らす。フリームファクシの轡からは「泡」が地へ落ち、それが露になると信じられた。
登場する物語
『ヴァフスルーズニルの言葉』が、この二頭を語る。
オーディンが巨人ヴァフスルーズニルに、人の子らの上を照らして日ごとに行く馬の名を問う。答えはスキンファクシであり、最も輝く馬とされ、その鬣は常に光を放つと語られる。
続いてオーディンは、夜を人の子らのもとへ牽く馬の名を問う。答えはフリームファクシであり、朝ごとに露を谷へもたらすと語られる。
『ギュルヴィたぶらかし』にも同じ内容が記される。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ペーテル・ニコライ・アルボの絵画《ダグ》である。スキンファクシに乗るダグを描く。
二頭の名が対をなしている。スキン(skin、「輝き」)とフリーム(hrím、「霜」)——同じファクシ(faxi、「鬣」)に、光と霜という対照的な語が付されている。昼と夜が、馬の鬣の性質として表されていることになる。
露の説明が加わっている点も見逃せない。夜の馬の轡から落ちる泡が朝の露になる——自然現象が神話の細部として組み込まれている。同様に、昼の馬の鬣が空と地を照らすという説明は、光の由来を語っている。
北欧神話において、太陽と月は狼に追われて逃げる。昼と夜もまた、馬に牽かれて絶えず移動する。天体と時間の運行が、いずれも走ることとして描かれている。
関わる神格・伝承
主はダグとノート。ノートの子ダグの父はデリングである。
太陽を牽く馬アールヴァクとアルスヴィズとは区別される。太陽の運行と昼の運行が別々の馬に割り当てられており、ソールとダグが別の神格であることに対応する。
名を持つ馬としては、ほかにスレイプニル、グラニ、グルファクシ、ブローズグホーヴィが知られる。
文化的足跡
グリーンランドのスキンファクセ氷河とリムファクセ氷河は、この二頭にちなんで命名された。
J・R・R・トールキン『指輪物語』の馬シャドウファクスの名も、この命名法に倣ったものである。ファクス(-faxi、鬣)を要素とする馬名の伝統が、20世紀の文学に受け継がれている。