アンビカー
アムビカー(Wikidata ja表記) · カーシヤの次女 · ドリタラーシュトラの母
カーシー国の王女でヴィチトラヴィーリヤの妃。ニヨーガの場でヴィヤーサを前に目を閉じ、盲目のドリタラーシュトラを産んだ女性。
解説
概要
アンビカー(Ambikā / अम्बिका)は『マハーバーラタ』に登場する女性で、カーシー国王カーシヤの次女、クル王ヴィチトラヴィーリヤの妃である。ドリタラーシュトラの母、カウラヴァ百王子の祖母にあたる。ニヨーガの場で聖仙ヴィヤーサを前に目を閉じてしまったために盲目の子を産んだとされ、その一瞬の反応が王家の行方を決めた人物として語られる。
神話・物語
姉アンバー、妹アンバーリカーとともに、婿選びの場からビーシュマによって力ずくで連れ去られた。ビーシュマは居並ぶ王族を打ち破って三姉妹を得、継母サティヤヴァティーのもとへ、異母弟ヴィチトラヴィーリヤの妃として差し出す。姉アンバーはサウバラ王シャールヴァを慕っていると告げて婚姻を退けたが、彼女と妹は王に嫁ぎ、七年をともに過ごしたと語られる。しかし王は労咳を病んで没し、跡継ぎは残らなかった。
そこでサティヤヴァティーは、婚前に産んでいた聖仙ヴィヤーサを呼び寄せる。長い苦行を経た聖仙の姿は荒れ果てており、近づかれた彼女は恐れのあまり目を閉じてしまった。その結果、生まれた子は盲目であった。ドリタラーシュトラである。
伝えによっては、なおも子を求められた彼女が、自らの代わりに侍女を送り出したとされる。その侍女から生まれたのがヴィドゥラで、恐れずに聖仙を迎えたために三人のうち最も賢明であったという。目を閉じた者、青ざめた者、恐れなかった者——三つの反応がそのまま三人の子の性質を決めるという構成になっている。
図像と象徴
固有の像容は伝わっておらず、独立した礼拝像の伝統もない。図像に現れるとすれば、ニヨーガの場面か、姉妹三人が連れ去られる場面である。象徴となるのは閉じられた目であり、子の盲目としてそのまま身体に刻まれる。母の一瞬の反応が子の生涯を定めるという主題は、妹の場合と対をなす。
系譜と関係
父はカーシー国王カーシヤ、母はカウサリヤー。姉はアンバー、妹はアンバーリカー。夫はヴィチトラヴィーリヤ。ニヨーガによる子がドリタラーシュトラで、その妃ガーンダーリーとの間にドゥルヨーダナ以下百王子が生まれた。妹の子パーンドゥの系統がパーンダヴァであり、両陣営の祖母は姉妹である。
文化的足跡
パーンドゥの死ののち、彼女は姑サティヤヴァティー、妹アンバーリカーとともに森へ入り、余生を苦行のうちに過ごしたと語られる。
近現代の再話では、力ずくで連れ去られ、望まぬ相手に嫁がされ、夫の死後には見知らぬ聖仙を迎えることを求められた女性として、その境遇に光が当てられることが多い。目を閉じたという行為も、恐れではなく拒絶の徴として読み直されることがある。原典が単に結果の説明として置いた細部が、後世の読みでは意志の表現として扱われている。