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閻羅王
PLATE — 閻羅王
SINÆ · 中国神話・道教
閻羅王

閻羅王

閻王 · 閻魔王 · 閻羅大王

金処士筆『十王図』のうち第五閻羅王(南宋・12世紀後半)/The Metropolitan Museum of Art PUBLIC DOMAIN

中国で冥界を主宰する神。インドのヤマが仏教とともに伝わり、道教の冥界観と結んで、死者を裁く十王の第五として東アジアに広まった。

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解説

概要

閻羅王(えんらおう、閻羅王 / Yánluó Wáng)は、中国で冥界を主宰し、死者の生前の行いを裁くとされる神である。閻王・閻魔王ともいう。名はサンスクリットのヤマ(Yama)の音写にさかのぼり、その素性はインドの死者の王ヤマにある。しかし今日知られる閻羅王――唐代の官人の衣冠をまとい、机上の帳簿を繰って判決を下す裁判官の姿――は、インドから運ばれてきたものではない。中国在来の冥界観と官僚制の発想が、仏教の地獄を作り替えた結果である。

冥界が役所になるまで

仏教が伝わる以前の中国では、死者の魂は泰山に集まると考えられ、その主宰者を泰山府君と呼んだ。冥界を統べる官があり、生死の名簿があるという観念は、この段階ですでに整っている。そこへ仏教の地獄(那落迦)の観念が入り、死後に罪を量られ、罰を受けるという構図が加わった。閻羅王の名が漢訳経典に現れたとき、中国の側にはそれを受け止める枠組みが用意されていたのである。

決定的だったのは、晩唐に撰述された『閻羅王授記四衆逆修生七往生浄土経』(略して『預修十王生七経』)である。蔵川の撰と称するこの経は、死者が初七日から三回忌までの十度にわたって十人の王の審理を受けると説き、十王の体系を確立した。閻羅王はその第五、三十五日(五七日)の審理を担う。生前にあらかじめ自らの追善を修める逆修(生七斎)を勧める点にも、この経の実践的な性格が表れている。

ただしこの経はインド由来ではなく、中国で撰述された偽経である。十王という数、王ごとの担当日、判官や書記を配した法廷という構成は、いずれも中国の官僚制と道教の冥界観に由来する。閻羅王が単独の絶対者ではなく、十人の王のうちの一人――しかも最も有名ではあるが、最終審ではない――という位置に置かれたことは、この神格の性格を決定づけた。裁きは官僚機構の分掌として行われるのである。

図像と象徴

閻羅王の像は、唐代の官人の道服をまとい、冕冠あるいは幞頭を戴き、笏を執る。机には生死簿が置かれ、左右には司録・司命という書記が控え、牛頭・馬頭や黒白無常といった鬼卒が亡者を引き立てる。憤怒相に描かれることもあるが、多くは威厳を備えた文官の相であり、忿怒尊として表されるチベット仏教の閻魔法王とは対照的である。

十王図は南宋の寧波の工房で量産され、金処士(金大受)や陸信忠の作が知られる。本図に見る第五閻羅王の一幅もその系統に属し、上段に王の法廷、下段に責め苦を受ける亡者を配する二段構成をとる。これらの仏画は日本へ多数もたらされ、日本の十王図・地獄絵の手本となった。

民間信仰のなかで

宋代以降、閻羅王は民間信仰の対象として広く親しまれた。とりわけよく知られるのが、清廉な裁判官として名高い北宋の包拯(ほうじょう、包青天)を閻羅王に結びつける伝承である。『宋史』包拯伝は、賄賂の通じない人物のたとえとして閻羅と包老の名を並べているが、これはあくまで比喩である。包拯が昼は陽間を、夜は陰間を裁いたとする「日は陽を審き、夜は陰を審く」の説話や、閻羅王の化身とする理解は、後代の講談・小説が育てたものであって、宋代の史書に根拠を求めることはできない。

台湾では閻羅天子として祀られ、雲林県の三条崙海清宮などが知られる。城隍神が土地ごとの死者を管轄し、その上に閻羅王が立つという重層的な冥界の官制が、廟の体系としても実現している。

東アジアへの広がり

日本には平安末期に十王信仰が伝わり、閻魔として定着した。鎌倉初期の『地蔵十王経』は閻魔の本地を地蔵菩薩と定め、裁く者と救う者を一つの尊格の表裏とした(本地垂迹)。法廷には亡者の生前をすべて映す浄玻璃鏡が据えられ、教師の成績簿を「閻魔帳」と呼ぶ言い回しもこの帳簿から出ている。朝鮮では염라대왕(ヨムナデワン)、ベトナムでは Diêm Vương として、それぞれの十王信仰のなかに組み込まれた。

文化的足跡

西遊記』第三回では、孫悟空が幽冥界に乗り込み、生死簿から自分と猴属の名を抹消して十王を狼狽させる。冥界の権威が官僚の帳簿に支えられているからこそ成立する痛快事である。「閻王が三更に死ねと言えば、五更まで生かしてはおけない」という諺は、この神が民衆にとって抗いようのない定めそのものであったことを伝える。現代の映像・漫画・ゲームにもしばしば登場するが、そこで描かれるのは中国で成立した裁判官としての相であり、祖霊を迎えるヴェーダのヤマの姿ではない。

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領分・別名

INTERPRETATIO — 同一視・同源
ヤマ ヒンドゥー神話 同一視
閻羅王はサンスクリットのヤマ(Yama)の音写にもとづく中国での呼称。漢訳経典を通じて同一尊格として受容され、晩唐の『預修十王生七経』で十王の第五に位置づけられた。
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資料

Wikidata
Q65122112 — 骨格データの出典
Commons
Yanluo — 図像カテゴリ