閻魔
閻魔大王 · 閻魔天 · 閻王
インドの死者の主ヤマが仏教に入り、地獄の王・死者の裁き手となったもの。中国では十王の第五とされ、日本では平安末から地蔵菩薩の化身とされた。中国の官吏の姿で笏を持って坐す。「嘘をつくと閻魔様に舌を抜かれる」という戒めが今日も残る。
解説
概要
閻魔は、仏教の地獄、冥界の主であり、冥界の王として死者の生前の罪を裁く神。「閻王」ともいう。インドにおける死者の主であるヤマが仏教に入ったものである。
閻魔は、サンスクリット語およびパーリ語のヤマの音訳。「ヤマラージャ」(ラージャは王の意味)とも。音訳は閻魔羅闍、意訳は閻魔大王。略して「閻羅王」「閻」とも。
「Yama」は、縛、双生、双王、遮止、平等、殺などと和訳される。「縛」は罪人を捕縛する意、「双王」は兄妹一対で二人並びたる王の意、「平等」は罪人を平等に裁くとの意からこれらの和訳がある。
東アジアの閻魔
インドのヤマは仏教に取り入れられて閻魔天となり、地獄の主と位置づけられるようになった。一説には、ヴェーダのヤマという一柱の神から、二つの道が分かれていったとも考えられている。一つは、下の暗い世界、つまり地獄の王となった閻魔であり、もう一つは、上の光の世界、つまり欲界の六つの天のうち三番目にあたる夜摩天である。
中国では、閻魔は道教と結びつき、死者を裁く十人の王の一人として、五番目の裁き手の位置に置かれた。中国での展開については、閻羅王の項で扱う。日本では、閻魔を地蔵菩薩の化身とする考えが平安時代末から現れ、鎌倉時代初めに成立した『地蔵十王経』で定まった。地蔵菩薩が人々を救うために閻魔の姿をとって裁くという、本地垂迹の考えによるものである。死後三十五日目に閻魔の裁きを受けるとされ、その像は寺院の閻魔堂に祀られた。チベットでは、閻魔は「死者の主」を意味するシンジェと呼ばれ、六道輪廻図では、閻魔が輪廻の輪を抱えている。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、奈良に伝わった安土桃山時代の閻魔王の掛幅である。
日本の閻魔像は、道服をまとい、冠をかぶり、笏を持って坐す中国の官吏の姿で表される。憤怒の表情で口を開く。両脇に司命・司録の二童子、あるいは奪衣婆を伴う。
系譜と関係
インドのヤマの仏教における姿。中国の閻羅王、十王の一人。日本では地蔵菩薩の化身。
大威徳明王は「閻魔を降す者」を意味し、閻魔と対をなす。
文化的足跡
「嘘をつくと閻魔様に舌を抜かれる」という言い回しは、子供への戒めとして日本で今日も広く知られる。
なお仏教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその尊格の伝承と図像に関する学術的な整理である。