スミトラー
スミトラ · ダシャラタ第二妃 · カーシーの王女
ダシャラタ王の第二王妃で、ラクシュマナとシャトルグナの母。天上の甘露を二度にわたり授かったために双子を産んだとされている。
解説
概要
スミトラー(Sumitrā / सुमित्रा)は、叙事詩『ラーマーヤナ』に登場する女性で、アヨーディヤー王ダシャラタの第二王妃、ラクシュマナとシャトルグナの母である。カーシー(現在のヴァーラーナシー)の出身。三人の妃のなかで最も影が薄く見えながら、二人の子がそれぞれラーマとバラタに付き従うという構成の要をなしている。
神話・物語
彼女を特徴づけるのは、天上の甘露の分配である。王子の誕生を祈願した馬祀祭のすえ、ダシャラタは神々の使者から甘露を授かった。第一妃カウサリヤーが半分を得たのち、残りの半分を彼女が授かり、さらに残りが第三妃カイケーイーに渡された。ところが王はカイケーイーに与えた分の半分をさらに彼女へ与えることを望み、カイケーイーは半分を得て残りを再び彼女に渡した。こうして二度にわたって甘露を授かった彼女は双子を懐妊し、ラクシュマナとシャトルグナを産んだとされる。
この分配の細部が、そのまま兄弟の関係を定めている。ラクシュマナはラーマに、シャトルグナはバラタに生涯付き従い、四人はつねに二対二の組をなす。分け前の順序が兄弟の絆の由来として語られるという構成は、叙事詩がしばしば用いる説明の型である。
彼女自身が物語を動かす場面はほとんどない。ラーマの追放にあたっては、子ラクシュマナが兄に随行することを認めて送り出したと語られる。夫の死後は、カウサリヤーとともに十四年を待つ身となった。
図像と象徴
固有の像容は伝わっておらず、独立した礼拝像の伝統もない。図像に現れるのは、三人の妃が並んで甘露を分ける場面である。象徴となるのは二度与えられた甘露で、二人の子を産んだことの説明であると同時に、控えめな位置にありながら二度選ばれた者という含意を帯びる。
系譜と関係
カーシー国の王女で、ダシャラタの第二妃。子はラクシュマナとシャトルグナ。第一妃カウサリヤーの子がラーマ、第三妃カイケーイーの子がバラタである。妃たちのなかで、彼女だけが誰とも争わず、誰にも恨まれなかった。
文化的足跡
伝統的な語りでは、王妃たちのうち最も慎み深い者として扱われる。とりわけ、ラクシュマナを森へ送り出す際に「ラーマを父と思い、シーターを母と思い、森を都と思え」と諭したとする一段が広く知られ、母の言葉としてしばしば引かれてきた。ただしこの台詞はヴァールミーキ本の本文にではなく、トゥルシーダースの『ラーマチャリタマーナサ』をはじめとする後代の再話に見えるものである。
近現代の再話では、争いから距離を置いた第二妃という位置づけそのものが注目されることがある。宮廷の力学の外に立ちえた者として読まれる一方、二人の子をいずれも他者に付き従わせた母として論じられることもある。