ストリューモーン
ストリュモン · Strymon · Strȳmōn
トラーキアのストリューモーン川の河神。ムーサの一人とのあいだにトロイア戦争の英雄レーソスをもうけた。ヘーラクレースに石を投げ込まれて船が通れなくなったという。
解説
概要
ストリューモーン(Στρυμών)は、ギリシア神話の河神である。オーケアノスとテーテュースの子で、トラーキア地方のストリューモーン川の神にあたる。トラーキアの王ともいわれる。
神話・物語
ムーサの一人——エウテルペー、カリオペー、テルプシコラー、あるいはクレイオー——とのあいだに、トロイア戦争の英雄レーソスをもうけた。おそらくオリュントスとブランガースもその子である。ネアイラとのあいだには娘エウアドネーが生まれた。
また、軍神アレースによってトラッサを産んだテレイネーの父でもあった。別の娘ロドペーは、海神ポセイドーンによってアトスの母になった。
ヘーラクレースとの挿話もある。ゲーリュオーンの牛を連れて帰る途上、ヘーラクレースがこの川を渡ろうとしたところ、河神が邪魔をした。怒ったヘーラクレースは川に石を投げ込み、以後この川は船が通れなくなったという。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
この河神の重要性は、レーソスの父であることによる。『イーリアス』第10巻に現れるトラーキア王レーソスは、白い馬で名高く、オデュッセウスとディオメーデースの夜襲で殺された。エウリピデースに帰される悲劇『レーソス』では、母ムーサが子の死を嘆く場面がある。
川の名がそのままトラーキアの王の名でもあるという設定は、河神と地方の王権が重ねられている例である。
関わる神格・伝承
父はオーケアノス、母はテーテュース。子はレーソス、娘はロドペーら。
ロドペーの子アトスは、アトス山の名祖である。トラーキアの川と山が、同じ家系に配されている。
文化的足跡
ストリューモーン川は今日のストルマ川であり、ブルガリアからギリシアへ流れてエーゲ海に注ぐ。日本語圏では、レーソスの父として系譜に現れる程度である。