エスファンディヤール
エスファンディヤール · イスファンディヤール · Esfandiyār
ザラスシュトラの祝福で目以外は武器の通らない身体を得たカヤーン朝の皇太子。七つの試練を果たしたが、父の策でロスタムに服従を求めて戦い、シームルグが教えたタマリスクの矢で目を射られて死んだ。
解説
概要
エスファンディヤールは、イランの国民的な歴史における伝説の英雄であり、フェルドウスィー『シャー・ナーメ』の登場人物の一人である。
カヤーン朝の王ゴシュタースプと妃カターユーンの子にして皇太子であった。カイ・ロフラースプの孫である。
エスファンディヤールは、『シャー・ナーメ』に記されるロスタムとの戦いの悲劇的な物語で最もよく知られる。これは『シャー・ナーメ』の最も長い挿話の一つであり、その文学的な白眉の一つである。
不死身の身体
エスファンディヤールは、預言者ザラスシュトラの教えを広めた王子である。ザラスシュトラはエスファンディヤールを祝福し、その体を武器の通らないものにしたが、目だけはそうならなかった。目だけが弱点であるという設定は、ギリシアのアキレウスの踵や、北欧のバルドルにとってのヤドリギと同じ型である。
七つの試練
父ゴシュタースプは、王位を譲る条件として、姉妹をトゥーラーンから救い出すよう命じた。
エスファンディヤールは七つの試練(ハフト・ハーン)を経て、これを果たした。狼、獅子、竜、魔女、鳥シームルグ、雪、そして川である。
ロスタムもかつて七つの試練を経ており、二人の英雄が同じ形式の試練を通過する。
ロスタムとの戦い
帰還したエスファンディヤールに、父は再び条件を出した。ロスタムを鎖につないで連れて来い、というのである。ロスタムは王に服従せず、自らの立場を保っていた。父はこの難題によって、息子を遠ざけようとしたとみられる。エスファンディヤールはロスタムに服従を求めたが、ロスタムは名誉のためにこれを拒み、二人は戦った。
ロスタムの武器はエスファンディヤールに通じず、深く傷ついたロスタムはシームルグに助けを求めた。シームルグは、ギョリュウ(タマリスク)の枝で作った矢で目を射るよう教え、ロスタムはそれに従ってエスファンディヤールを殺した。ただしシームルグは、エスファンディヤールを殺した者はその後災いを負うと警告していた。死にゆくエスファンディヤールは、自分の子をロスタムに託した。ロスタムはのちに、異母弟の企みによって穴に落ちて命を落とすことになる。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ラムサルのエスファンディヤール像である。
関わる神格・伝承
父はゴシュタースプ。ザラスシュトラに祝福された。ロスタムに殺された。
文化的足跡
ロスタムとエスファンディヤールの戦いは、『シャー・ナーメ』の悲劇の頂点とされる。二人とも正しく、それゆえ戦わねばならないという構造が、繰り返し論じられてきた。
なおゾロアスター教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格と伝承に関する学術的な整理である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。