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セマルグル
PLATE — СИМАРГЛ
SLAVI · スラヴ神話
СИМАРГЛ

セマルグル

シマルグル · セマールグル · スィマルグル

Dunadan Ranger CC BY-SA 4.0

ウラジーミル1世が980年にキエフの丘に立てた六体の神像の一つ。翼を持つ犬の姿で語られるが、一柱の神なのかシムとルギルという二柱なのかから争われている。

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解説

概要

セマルグル(Симаргл/Сѣмарьглъ)は、ウラジーミル1世が980年にキエフの丘に立てた六体の神像の一つである。翼を持つ犬の姿で語られることが多い。ただし、この名が一柱の神を指すのか、シムとルギルという二柱を指すのかという段階から争われている。

言及する史料は二つしかない。それにもかかわらず、現在流通する「植物と種の神」「火の神」という説明は、いずれも20世紀の復元に由来する。

神話・物語

物語はない。

一つ目の典拠は原初年代記の980年の条で、ペルーンホルスダジボーグストリボーグモコシと並んで名が挙がる。写本によって綴りが違う。ラヴレンチー写本は Симарьгла、イパーチー写本は Сѣмарьгла、ラジヴィウ写本は Семарьгла(いずれも属格)である。

二つ目は12世紀後半の『キリストを愛する者の説教』で、ここでは「シム」と「ルギル」という二つの名として現れる。この説教は、麦束の下で火を焚き、ヴィラたち、モコシ、シムとルギル、ペルーン、ロドとロジャニツァに供物を捧げる者たちを戒めている。二柱と読むか一柱の誤写と読むかが、この神をめぐる議論の分かれ目である。

図像と象徴

本項の主画像は、チェルニーヒウの聖ボリス・グレープ大聖堂に伝わる12世紀の柱頭で、絡み合う蔓のあいだに翼と牙を持つ獣が彫り出されている。キエフやリャザンで見つかった12〜13世紀の銀の腕輪にも、鳥と獣を合わせた生き物の像がある。ルィバコフはこれらをセマルグルの図像と見た。

しかし、この同定は保証されていない。ヴァシーリエフは、この種の像のうち最も古いもの(10世紀以降)を分析したうえで、これらは西欧ロマネスク様式の竜を古ルーシが受容した結果と見るべきであり、翼ある犬を一律にセマルグルと呼ぶのはルィバコフの独断だと批判する。主画像もこの批判の射程に入っていることは、あらかじめ断っておく必要がある。二つの史料はいずれも、この神の姿について一言も述べていない。

系譜と関係

1841年、プレイスはシムとルギルを旧約のアシマとネルガルに対応する存在と考えた。マンシッカがこれを支持する。ファミツィンは Sim Yaryl の誤写と見た。イヴァノフとトポロフは当初 *Sedmor(o)-golvъ「七つの頭」を再建し、複数の神を統合した存在と解した。日本語の紹介に見える「七柱の神を統合させた存在」という説明はここに由来する。

1933年、東洋学者トレヴェルがイランのシームルグ起源説を出した。シームルグ(中世ペルシア語 Sēnmurw、アヴェスター語 saēna-marga)は犬の頭を持つ翼の生き物で、植物の守護者とされる。この説は現在も主流である。ルィバコフはこれを承け、セマルグルを種と芽と根の神、天の神々と地のあいだを取り持つ下位の神格とし、ペレプルートと同一の存在と考えた。ギェイシュトル、のちにイヴァノフとトポロフもこの線に立つ。

ヴァシーリエフは借用そのものは受け入れつつ、植物神説を否定する。シームルグが植物の守護者であったことを示すイラン・インドの史料はなく、そこから職能を継ぐことはできない。ただしシームルグには世界のあいだを取り持つという印欧イラン共通の性格があり、東イラン神話では人間の集団の守護者となる。それがウラジーミルの神々の列に入れられた理由だろう、というのが彼の見立てである。犬頭のシームルグ像はササン朝以後のイランに生まれたもので、スラヴ人が受け取ったとされる東イラン系のシームルグが犬の頭を持っていた証拠はない、とも指摘する。

音韻の面からも批判がある。母音と語末の -l が合わない。そこで、そもそも二柱の神と読む立場が出てくる。ブリュクナーは、原初年代記ではホルスとダジボーグのあいだにも接続詞がないが両者は別の神なのだから、セマルグルも二語に分けるべきだと論じた。ピトロとヴォカーチは、セムとルギルを双子神、スラヴにおけるディオスクロイと見る。

セムを「種を蒔く」(スラヴ祖語 *sěti)に結びつける説(ヴィトチャク、カツォル、ウチンスキ)、ルギルをリトアニアの神ルグリスやポーランド語 reż「ライ麦」に結びつける説(ブリュクナー)も出されているが、いずれも決め手を欠く。ウチンスキは、これらの語源説の多くが史料の綴りを取り違えたうえで立てられていることを指摘した。

モコシと結びつけ、大女神に付き添う聖獣、あるいは畑に撒かれた種の神格化と見る整理は、日本語文献にも広く流布している。

文化的足跡

グリフォンめいた翼ある犬という姿は、現代のゲームや小説で好まれる。スラヴ新異教運動(ロドノヴェーリエ)では「火の神セマルグル」とされ、絵画でも炎とともに描かれることが多い。この火との結びつきを支える史料はない。

二行の記録に、これだけの造形と職能が積み上げられている。セマルグルを調べるときは、目にしている説明がどこから来たのかを追うことが、そのまま研究史をたどることになる。

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領分・別名

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資料

Wikidata
Q1335234 — 骨格データの出典
Commons
Simargl — 図像カテゴリ