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セラピス
PLATE — WSJR-ḤP
AEGYPTVS · エジプト神話
WSJR-ḤP

セラピス

サラピス · オシル・ハピ · ウセルハピ

Jastrow (2003) PUBLIC DOMAIN

プトレマイオス朝のエジプトで成立した習合神。オシリスと聖牛アピスを結び、ギリシア風の姿を与えた。地中海世界に広く信仰され、冥界と癒しを司った。

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解説

概要

セラピス(Σάραπις / Serapis)は、プトレマイオス朝のエジプトで成立した習合神である。エジプト語のウシル・ハピ(wsjr-ḥp、「オシリス・アピス」)——死んだ聖牛アピスオシリスと一体になった姿——を語源とし、コプト語ではウセルハピと呼ばれた。ギリシア語ではサラピス、ローマ期にはセラピスの形が一般化する。

プトレマイオス1世ソテルが、ギリシア系の住民とエジプト人が同じ神を拝めるように推進した神とされる。ギリシア人は動物の頭をもつ神像を好まなかったため、人の姿の像が選ばれ、それがアピスと同一であると宣言された。以後、歴代の王が政策としてこの信仰を広げ、ローマ期には地中海世界の各地に神殿が建った。

神話・物語

起源をめぐる伝承は幾重にも食い違う。プルタルコスは、プトレマイオス1世の夢に見知らぬ神が立ち、シノペから神像を運べと命じたと伝える。運ばれた像を、エレウシースの秘儀を司る家系の祭司と、エジプト人神官マネトーの二人が「セラピスである」と判定した——ギリシアとエジプトの双方から権威づけたという筋である。ただし、この「シノペ」を黒海沿岸の都市ではなく、メンフィスにあった「シノペイオンの丘」の取り違えとみる説がある。タキトゥスはまた別に、もとはラコティスという村の神で、それがアレクサンドリアの拡大とともに広まったとする。

さらに古い言及として、前323年、アレクサンドロス大王の死の場面に「サラピス」の名が出る。だがバビロンにはエア(エンキ)を指すシャル・アプシ(「深淵の王」)の呼称があり、そこで神託を伺われたのはこちらであった可能性が高い。音の近さが後世の混同を招いたとみられる。

政治的に設計された神でありながら、その出自については古代の記述そのものが一致していない。むしろ、複数の由来を同時に語れることが、この神が広まった条件だったとも言える。

図像と象徴

ギリシア風の壮年男性像である。豊かな髭をたくわえ、頭に穀物を量る器モディウスを載せる。器は死者の国の実りを表す標識で、ハデスあるいはプルートーの図像から借りられた。手には統治を示す王笏を握り、足もとには冥界の番犬ケルベロスが控える。台座に蛇を配した作例は、エジプトの王権の徴であるウラエウスを重ねたものと解される。

ギリシアの造形にエジプトの意味を潜ませる、という設計がここに現れている。動物の頭を避けながら、蛇と冥界の主という要素でエジプト側の理解も成り立たせているのである。

アレクサンドリアの神像は彫刻家ブリュアクシスの作と伝えられる。本サイトが主画像に掲げるのは、その模刻とされるヴァチカン美術館蔵の胸像である。指輪の彫玉、ランプ、貨幣にも図像は繰り返し用いられ、地中海全域に流通した。

系譜と関係

妻はイシス、子はハルポクラテス(幼児のホルスのギリシア形)。エジプト国外の神殿では、イシスの配偶神の位置をオシリスに代わってセラピスが占めることが多かった。アヌビスはケルベロスと重ねられた。

同一視の相手は広い。ゼウス、ハデス、ディオニュソス、アスクレピオス、アメン——冥界の主としての相、癒す神としての相、実りの神としての相が、それぞれ別の神を呼び寄せた。一柱の神が複数の同定を同時に抱えたまま機能した点で、インテルプレタティオ・グラエカの最も入り組んだ実例である。

文化的足跡

神殿はセラペウムと呼ばれ、アレクサンドリアのそれは古代世界に名高い建築であった。ローマではカンプス・マルティウスのイシス聖域で共に祀られる。ウェスパシアヌスがアレクサンドリアで体験したとされる奇蹟がこの神に帰され、フラウィウス朝以降、貨幣に皇帝と並ぶ図像が現れる。

391年前後、アレクサンドリアのセラペウムはキリスト教徒によって破壊された。テオドシウス1世によるキリスト教の国教化とともに、この神の祭祀は絶える。『ローマ皇帝群像』に収められたハドリアヌス帝の名を冠する書簡は、エジプトでキリスト教徒とセラピス崇拝者の区別がつかない有様を嘆いているが、この書簡自体が後代の偽作である疑いが濃く、当時の実態を直接示す資料としては扱えない。

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領分・別名

INTERPRETATIO — 同一視・同源
アピス エジプト神話 同一視
死んだアピスとオシリスが結合したオシル・ハピ(wsjr-ḥp)がギリシア語形サラピス/セラピスの語源。プトレマイオス1世期の習合
オシリス エジプト神話 同一視
オシリス・アピスを語源とし、エジプト国外の神殿ではイシスの配偶神の位置をオシリスに代わって占めた
ハーデース ギリシア神話 同一視
冥界の主としての図像(モディウス・王笏・ケルベロス)はハデス/プルートーから借りられた。インテルプレタティオ・グラエカ

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承点線=異伝・別系統

WSJR-ḤP
セラピス
エジプト神話
ISIS
イシス
配偶者
収載データなし
WSJR-ḤP
セラピス
エジプト神話
収載データなし
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資料

Wikidata
Q214554 — 骨格データの出典
Commons
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