レーヴァティー
レヴァティ · レーヴァティ · シャシュティー
バララーマの妃とされる女神。父とともにブラフマー界を訪れているあいだに、地上では二十七の四ユガが過ぎていたという説話で知られる。
解説
概要
レーヴァティー(Revatī / रेवती)は、バララーマの妃とされる女神である。カクドミ王の娘で、父とともにブラフマーの世界を訪れているあいだに地上で長大な時が流れていたという婚姻譚で知られる。名は二十七宿の最後にあたる星宿の名でもあり、それとは別に、子どもを害しまた守る母神としての古い層をもつ。
神話・物語
婚姻譚は『ヴィシュヌ・プラーナ』『バーガヴァタ・プラーナ』が伝える。クシャスタリーの王カクドミは、娘に釣り合う婿が地上にいないと考え、レーヴァティーを伴ってブラフマーの世界へ上った。ブラフマーはガンダルヴァの奏楽を聴いており、二人は演奏が終わるまで待つ。ようやく候補者の名を挙げると、ブラフマーは笑い、界によって時の流れが異なること、待つあいだに地上では二十七の四ユガ(チャトゥル・ユガ)が過ぎ、候補者はことごとく世を去ったことを告げた。そのうえで、いまヴィシュヌがクリシュナとバララーマの姿で地上にあるとして、兄バララーマを婿に薦めたという。
地上へ戻った二人が見たのは、変わり果てた風景と、背丈も気力も衰えた人々であった。都クシャスタリーはドヴァーラカーと名を改めていた。前の時代の生まれであるレーヴァティーは、夫となるべきバララーマよりはるかに背が高かったが、バララーマが鋤の先で肩を押すとその世の人の丈に縮んだと語られる。二人はニシャタとウルムカの二子をもうけた。子らはヤーダヴァ族の同族争いで死に、バララーマが世を去ったのち、レーヴァティーもその後を追ったと伝えられる。
これとは別に、より古い層の伝えがある。『デーヴィー・バーガヴァタ・プラーナ』などは彼女をプラクリティの一相シャシュティーと結びつけ、子を望む夫婦が祈り、出産の六日目に祀る神とする。魔神ディールガジフヴィーとの戦いではスカンダの求めに応じ、シャーラヴリキー(牝狼)の姿で敵陣を蹂躙したという苛烈な説話も伝わる。のちに富と幸運の性格が加わり、ラクシュミーの一形態と見なされるようになった。婚姻譚の温和な王女と、この母神とは、もともと層の異なる伝承が一つの名のもとに束ねられたものと考えられる。
図像と象徴
独立した像容はほとんど定まっていない。作例としては、鋤を担ぐ夫の傍らに立つ対像として描かれるのが通例で、単独の礼拝像は乏しい。星宿としてのレーヴァティーは魚を標識とし、旅人と家畜を守るプーシャンに配される。魚は養いと移動と繁栄を示す符牒であり、黄道の最後に置かれることから、次の巡りへ渡る境目としても読まれてきた。
仏教の文脈では別の展開がある。チベット大蔵経には、子どもの病を司る女神レーヴァティーへの讃と陀羅尼が収められ、金剛手が彼女を曼荼羅に迎え入れる筋が語られる。ヒンドゥーの婚姻譚とは連続しない、母神としての層がそこに引き継がれている。
系譜と関係
父はカクドミ王。夫はバララーマ、子はニシャタとウルムカ。『バラバドラ・マーハートミヤ』は、彼女をシェーシャの妃ナーガラクシュミーの化身とし、夫がシェーシャの化身であることと対をなす形で語る。
文化的足跡
カクドミの説話は、界によって時の流れが異なるという主題を明快に語る例として、インド思想史の概説でもしばしば取り上げられる。近代以降、相対論的な時間の伸縮になぞらえて紹介されることがあるが、これは後世の読み替えである。原典が力点を置くのは時間の物理ではなく、帰る場所を失った王の当惑と、時代が下るにつれて人が衰えるというユガ論の枠組みのほうにある。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。