ランギとパパ
ランギヌイ · パパトゥーアーヌク · ラキヌイ
マオリ神話の原初の夫婦、天父ランギヌイと地母パパトゥーアーヌク。固く抱き合う二人のあいだの闇に住んだ子らが、森の神タネの力でこれを引き離した。以来、雨は天の涙、霧は地の溜め息とされる。
解説
概要
ランギとパパ——ランギヌイ(Ranginui、天父)とパパトゥーアーヌク(Papatūānuku、地母)——は、マオリ神話の原初の夫婦である。世界とマオリの人々の起源を語る創世神話に現れる。多くの異なる版がある。南島の一部の方言では、ランギはラキあるいはラキヌイと呼ばれる。
神話・物語
ランギヌイはまずポハルア・テ・ポーと結ばれ、アオランギ(南島ではアオラキ)を含む三人の子をもうけた。のちにパパトゥーアーヌクと結ばれ、原初の天父と地母として五百を超える子——タウィリマーテア、タネ、タンガロアらを含む——をもうけた。
二人は固く抱き合って横たわり、息子たちはそのあいだの狭い闇に住むことを強いられていた。
子らは成長し、光のなかで生きることについて語り合う。最も獰猛なトゥーマタウエンガは両親を殺すことを提案した。しかし兄弟タネは反対し、押し離すほうがよいと説く。ロンゴが試み、タンガロアとハウミア・ティケティケが加わったが、二人は愛の抱擁のまま離れない。
何度もの試みののち、森と鳥の神タネが仰向けになり、肩を母に、脚を父に当てて押し、ついに二人を引き離した。
ランギとパパは離れて以来、互いを求めて嘆き続けている。ランギの涙が雨となり、パパの溜め息が霧となる。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、抱き合う男女を表すマオリの彫刻である。食糧庫(パータカ)の装飾に用いられたもので、ランギとパパを表すと解される。
天と地が抱き合い、その子らが引き離すという構造は、ギリシアのウーラノスとガイアの物語と比較されてきた。ただしギリシアでは子が父を去勢するのに対し、マオリでは押し離す。殺すことを提案したトゥーの案が退けられ、分離という穏やかな解決が選ばれる点に、この神話の性格がある。
雨と霧を両親の嘆きとする説明も、自然現象の起源譚として機能している。
関わる神格・伝承
子はタネ、タンガロア、トゥー、ロンゴ、ハウミア、タウィリマーテア。
ハワイでは、ワーケア(天)とパパ(地)が対応する。パパの名がハワイとマオリに共通する。
文化的足跡
ニュージーランドの環境保護の文脈で、パパトゥーアーヌクは大地そのものの名として今日も用いられる。2017年、ワンガヌイ川に法人格が認められた際、マオリの宇宙観が法制度に反映された例として国際的に注目された。
なおマオリの信仰は、今日まで続く生きた伝統である。