タンガロア
タカロア · タガロア · タアロア
マオリ神話の海の神。天と地を引き離した兄弟の一人で、嵐の神に追われて海に隠れた。逃げた子らを匿う森の神タネへの恨みが、海と陸の対立として語られる。サモアのタガロアと同源。
解説
概要
タンガロアは、マオリ神話で海と湖と川、そしてそこに生きるもの、とりわけ魚を治める大いなるアトゥア(神)である。南島の方言ではタカロアといい、サモアのタガロアと同じ語に由来する。潮の満ち引きを支配する相はタンガロア・ファカマウタイと呼ばれ、鯨の姿で表されることもある。
クック諸島にも似た役割の神として伝わるが、マニヒキ島では火の神で、マウイが火を奪う相手になっている。マオリでこの役に当たるのは、火の女神マフイカである。
神話・物語
ランギヌイとパパトゥーアーヌク——天と地——の子である。兄弟ロンゴ、トゥー、ハウミア、タネとともに両親を力ずくで引き離したのち、嵐の神タウィリマーテアに攻められ、海に隠れることを強いられた。
多くの海の生き物の父である。子プンガには二人の子があり、イカテレは魚の祖、トゥー・テ・ウェヒウェヒは爬虫類の祖となった。タウィリマーテアの猛攻に怯えた魚は海に、爬虫類は森に逃げ込む。以来タンガロアは、逃げた子らを匿う森の神タネ・マフタに恨みを抱いている。
海の神と森の神の対立は、マオリが海と陸を対立する領域と考えていたことを示す。人が魚を獲りに、あるいは旅に海へ出るとき、彼らは実質的にタネ・マフタの代理として、その敵の領域に入ることになる。それゆえ海に出る前には、タンガロアを宥める儀礼が必要とされた。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、クック諸島ラロトンガ島の石のタンガロア像である。
固有の古い図像は伝わっていない。
サモアではタガロアが至高の創造神であり、マオリの海神とは位置づけが大きく異なる。同じ名の神が、島群によって海の神から創造神まで幅を持つ。ポリネシアの神々の性格が、航海による分散のなかで変化したことを示す例である。
関わる神格・伝承
父はランギヌイ、母はパパトゥーアーヌク。兄弟はタネ、トゥー、ロンゴ、ハウミア、タウィリマーテア。
タヒチのタアロア、ハワイのカナロアと同源とされる。ただしハワイではカナロアの位置づけが異なり、四大神の一柱でありながらカーネに従属的な相を持つ。
文化的足跡
ニュージーランドでは、タンガロアの名は海洋保護の文脈で今日も引かれる。マオリの伝統的な漁業管理(ラーフイ)は、この神への敬意と結びつけられて説明される。
なおマオリの信仰は、キリスト教化を経つつも今日まで続く生きた伝統である。
なおポリネシアの伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。