リューシマケー
リュシマケ · リューシマケ · Lysimache
ギリシア神話の女性の名。メラムプースの子アバースの娘でアドラーストスとエリピューレーの母、およびプリアモスの娘が知られる。名は「戦を解く者」を意味する。
解説
概要
リューシマケー(Λυσιμάχη、「戦を解く者」)は、ギリシア神話の女性の名である。主として二人が知られる。
同名の女性たち
アバースの娘。 アルゴスの予言者メラムプースの子アバースの娘である。タラーオスと結婚し、五人の息子——アドラーストス(のちのアルゴス王)、パルテノパイオス、プローナクス、メーキステウス、アリストマコス——と、一人の娘エリピューレーを産んだ。
息子たちはのちにテーバイ攻めの七将として遠征軍の将となる。娘エリピューレーは予言者アムピアラーオスと結婚したが、黄金の首飾りに目がくらんで夫を出征させ、その死と、のちの悲劇の原因を作った。
プリアモスの娘。 トロイア王プリアモスの娘である。五十人いたとされる子の一人だが、ヘカベーの子には含まれておらず、母の名は伝わっていない。
なお、前430年から365年まで六十四年にわたってアテーナー・ポリアスの女祭司を務めたリューシマケー——バテのドラコンティデースの娘——は歴史上の人物である。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
名が「戦を解く者」を意味する一方で、その子孫が二度にわたるテーバイ戦争を担うという逆説がある。五人の息子が七将に加わり、娘の夫が出征して死に、孫たちがエピゴノイとして再び攻める。名とは逆に、この女性の系譜は戦を生み続ける。
アリストパネースの喜劇『リューシストラテー』の主人公の名は「軍を解く者」を意味し、この名と同じ構成をとる。当時アテーナー・ポリアスの女祭司であった実在のリューシマケーを踏まえた命名だとする説が、古くから提出されてきた。
関わる神格・伝承
第一の夫はタラーオス、子はアドラーストスとエリピューレーら。父はアバース、祖父はメラムプース。
メラムプースの家系は、アルゴスにおける予言者の血統である。イーピノエーらプロイトスの娘たちを癒した功によって王国の一部を得たとされ、その子孫がアルゴス王家に連なる。
文化的足跡
『リューシストラテー』との関係は、喜劇と現実の祭祀がどう交差したかを示す論点である。観客が女祭司の名を知っていたなら、主人公の名は当時のアテーナイにおいて具体的な連想を伴っていたことになる。
日本語圏でこの名が挙げられることはまずない。アドラーストスの母、エリピューレーの母として系譜に現れる程度である。